芳醇なVSOP

今回は、これからの秋の夜長に高級ブランデーを味わいましょうということではなく、私が10代の頃に聞き、人生の指針の一つとしている言葉についてお話しします。

「VSOP」は各年代に求められる事柄の頭文字を取って表したものです。

20代はVでバイタリティ(活力)を持って様々なことに取組み、30代はSでスペシャリティ(専門)のことでより専門性を高める年代です。

次の40代Oはオリジナリティ(独創性)を高め、50代以降はPでパーソナリティ(人格)を磨くことが重要であるということを示しています。

 

この言葉たちは色々な立場の人に当てはまると思いますが、私たち医療に携わる人間にとっても大きな指針を与えてくれていると感じています。

例えば、鍼灸師として社会に出たとはいえ、まだまだ未熟な20代はただがむしゃらに仕事に慣れ様々なことに挑戦し、吸収する年代です。

 

続いての30代では、20代で取り組んできた内容の専門性を高めていくことになります。

(私たちであれば鍼灸の治療技術の専門性を向上させていく時期にあたります。)

40代では、これまでの経験を踏まえ創意工夫を重ね自分流の治療法を確立させていき、50代以降は技術だけに留まらず、自分のパーソナリティを豊かにし、患者さんといかに向き合えるようになるかが大切だと思っています。

 

今、私は40代になりました。

専門性はもっと高めないといけませんし、創意工夫を重ねる必要があると感じています。

もちろんどの年代であってもバイタリティ、スペシャリティ、オリジナリティ、パーソナリティは必要だと感じますが、このようにひとつひとつの言葉を各年代に意識づけることにより、私にとっては道しるべにも、また時には、自分を見直す手がかりともなっています。

そして将来、皆さんと芳醇な美酒で乾杯できればと思います。

神戸東洋医療学院 付属治療院

川上 靖

真夏の夜の供  

熱帯夜、何度も寝返りをうっている間にだんだんと空が白んでくる。

目覚まし時計より先にセミの鳴き声で起こされる。そんなぐっすり眠れぬ日々を過ごされていませんか。

 

しかし、この季節、私たちの健やかな睡眠を妨げるものは蒸し暑さやセミの鳴き声だけではありません。

耳元で羽音はすれども、いざ電気をつけると姿は見当たらない。電気を消して寝ようとすると、また耳元で羽音!

そうです。我らの安眠の大敵、蚊です。

命がけで血を吸いにくる蚊に私はいつも思います。痒くならないならこんなに疎まれることもないだろうに。多少、血くらい分けてあげるのに、と。

 

薬剤を加熱して蒸散させるリキッド式や、風で飛ばすファン式、吊るすタイプやスプレータイプなど、蚊の対策グッズも今では多様になってきましたが、私は昔ながらの蚊取り線香派です。

当たり前のように傍にあり過ぎて気づけなかった蚊取り線香について、今回はご紹介してみたいと思います。

 

蚊取り線香といえば「金鳥(キンチョウ)」が思い浮かぶ人が多いと思われますが、蚊取り線香の歴史は、大日本除虫菊株式会社(金鳥の正式社名)の創業者が線香に除虫菊を練り込むことを考案したことに始まります。

1890年に世界初の棒状蚊取り線香「金鳥香」が誕生しました。

しかし、棒状のものは立てて使うために線香が倒れ火災が発生することも少なくないうえに、一度の点火で長時間にわたって燃焼させることが難しいという欠点がありました。

現在一般的に普及している渦巻き形の蚊取り線香のデザインは1895年からのもので、とぐろを巻く蛇が発想の元になったそうです。

このデザインにすることで、燃焼時間が長くなり、かつ嵩張らない。また、寝かせた状態で使うので従来の形状よりも安全に取り扱えるようになりました。

 

蚊取り線香の殺虫効果は煙そのものにあると思われがちですが(私もそう思っていましたが)、実際には燃焼部分の手前で高温により揮発する化学物質にあります。

この化学物質には除虫菊から取れる天然成分のピレトリンや、その類似物質で化学的に合成したピレスロイドが使われています。

除虫菊の代わりにレモングラスの成分などを使用した製品もありますが、そちらには忌避効果はあるものの殺虫効果はありません。

 

火を使う、煙が出るといった点はデメリットとして見られてしまいそうですが、どこか懐かしさを感じさせる蚊取り線香の香りは日本の夏の風物詩と言ってよいでしょう。

また最近では、ローズの香りや森の香りなどアロマタイプの製品や煙の少ないタイプ、時間の長短などラインナップは非常に充実しているようです。

市販されている「せんねん灸」にも通じるところがありますね。

 

ちなみに大日本除虫菊株式会社という正式社名より、金鳥という商標のほうが一般的に浸透していますが、創業のきっかけを忘れないように社名は堅持しているとのことです。

 

大切な根本部分、信念は守りつつ、時代の流れや状況等に合わせてよりよい方向に変えていく柔軟さ。

企業理念や商品開発にとどまらず、人が生きていくうえで、あらゆることにあてはまるのではないでしょうか。

うだるような熱帯夜に蚊取り線香の煙を眺めながら、そんなことを考えていました。

 

 

神戸東洋医療学院付属治療院 池田 朋子

勝利の笑みを君と!

4年に一度のサッカーの祭典、ブラジルW杯の開幕まで1ヶ月を切りました。

先週行われた代表メンバー発表もほとんどのテレビ局が生中継を行う等、やはり他の競技にはない注目度の高さがうかがえます。

選ばれた選手、落選した選手、そして、その家族やサポーター、それぞれの思いは計り知れませんが、出場する選手が最高のコンディションで素晴らしいパフォーマンスを見せてくれることを願うばかりです。

 

さて、今回の日本代表メンバー23名のうち、日本以外のクラブチームに所属している、いわゆる「海外組」が12名も含まれている、ということは皆さんもニュースなどでよく耳にされていることでしょう。

前回の2010年南アフリカW杯の代表メンバーには4名だったのでこれは大きな変化です。

しかも、ただチームに所属しているだけでなく、体格の大きな各国の代表級の選手がひしめき合う中で、日本人選手が出場メンバーの座を勝ち取り、結果も残しているというのは、何年か前では想像も出来なかったことです。

 

このようにサッカー選手の海外進出がめざましい今日ですが、海外進出しているのは選手だけではありません。

2012年のドイツの新聞ではブンデスリーガ(日本でいうJリーグ)で活躍する日本人鍼灸トレーナーについて大きく取り上げられました。

また、そのことが中国でも紹介され、「日本サッカーの向上とは何も選手のレベルアップだけではない。各方面にわたる全面的な向上なのだ」と評価されています。

 

欧州でも鍼灸はさかんに行われていますが、プロスポーツ界ではまだまだなじみのない分野といえます。

初めは懐疑的な目で見ていた外国人選手たちも、効果を実感することで従来の電気治療から鍼灸治療に乗り換え、今では積極的に治療を受けるようになっているようです。

鍼灸治療による怪我の治療、早期回復促進はもちろん、練習前後の日々のケアを行うことで劇的に故障者を減らし、目に見えた実績をあげているとのことです。

日本人鍼灸師が海外のチームで認められ活躍しているのは、選手の活躍同様、誇らしく嬉しいものですね。

 

話は戻って、さぁ、いよいよブラジル大会です!

時差はちょうど12時間。寝不足覚悟の方も少なくないでしょう。

ただでさえ心身が不調を感じやすくなる梅雨の時期です。

地球の裏側まで届くくらい思い切り応援できるよう、今のうちから選手並みにコンディショニングしていきましょう!!

 

神戸東洋医療学院 付属治療院   池田朋子

あなたはどっち派?

あけましておめでとうございます。

2014年ももう2週間も過ぎてしまいましたが、今年初めての東洋医学的雑記ということで、新年のご挨拶をさせていただきました。

 

年末年始、今年は土日の関係で例年より長い休暇となった方も多いのではないでしょうか。

その分、普段通りの生活に戻るのにもいつも以上に気合いと時間が要りますね。

そこで今回は、「公式には」、お正月気分をいつまで引きずってよいのかというお話です。

 

私が子供の頃は、しめ縄を飾った自動車をよくみかけましたが、最近はめっきり目にしなくなりました。門松を飾るお家も少なくなりましたね。

このしめ縄や門松などのお正月飾りを飾っておく期間を「松の内」と呼びます。

年神様がいらっしゃる「松の内」が明けると、お正月にお供えしていた鏡餅を下げて、お餅を割って食べる「鏡開き」が行われます。

鏡餅には神様の霊が宿っており、食べることでその力を授かることができるとされ、一年の無病息災や家内安全を願います。

また、お餅を包丁などの刃物で切ることは切腹を連想させることから、木槌を用いたり、そのまま手で割る習わしとなっています。

 

現在では、全国的に1月11日に鏡開きを行うのが一般的ですが、もともと松の内は1月15日、鏡開きはその後の1月20日でした。

しかし、三代将軍徳川家光が亡くなったのが4月20日だったため、忌み日である「20日」を避けて1月11日を鏡開きとしたそうです。

その際、鏡開きの後もお正月飾りを飾っておくのは不自然なので、松の内もその前の1月7日に変更したのだとか。

 

ただ、徳川幕府があった関東ではそれが浸透しましたが、関西では正確に広まらなかった為、松の内が1月15日、鏡開きが1月20日のままとなっているところもあるようです。

たしかに家の近所では、まだ、しめ縄を飾ったままの関西流のおうちもちらほら。。。

みなさんのおうちではいかがでしょうか。

 

年越しそば、おせち料理、七草がゆ、鏡開き、そして2月の節分には恵方巻き―。

食べもののことばかりですが、そして、それぞれの食材や料理に込められた意味や願い、また日本に古くから伝わる伝統に思いをはせながらいただきましょう。

 

みなさんにとって心身共に健やかな一年になりますように。

 神戸東洋医療学院 付属治療院 池田朋子

祝2020東京オリンピックそれでもあなたはスポーツをしますか?

先日2020年夏季五輪の開催地が東京に決まりました。

同じ国に住む一人として素直に嬉しく感じています。

そして今から7年後のオリンピックが楽しみでなりません。

その日のために当院にもテレビを設置しようか?

いやいや施術に集中ができなくなりそうなのでやめておこうか?

気の早い話ですね。

そんな風に私たちに夢や希望また、感動を与えてくれるスポーツですが、果たして私たちの健康にはどんな影響を与えるのでしょうか。

 

一般的に私たちは一流アスリートの経験はありません。

しかしながら、学生時代に運動系の部活で競技スポーツの経験を持つ人は多いと思います。

そのことから運動は体力がつき、活発にもなるイメージがあり健康に有益なものであると考えがちです。

では、ハエやマウスを使った運動が寿命に与える影響を調べた有名な研究の結果を紹介します。

同じく十分に食事を与える条件下で運動量を制限されたグループと、運動量が豊富なグループでは運動量を制限されたグループの方が寿命が長いという結果が出ています。

この事実を初めて知ったとき納得しにくい気持ちになったことを覚えています。

やはり私たちはスポーツに対する幻想を持っていると言えます。

 

とは言うものの、私たち人間にとってスポーツは1、自己実現の手段に2、運動不足の現代人にとって本来の体調を保つ3、精神的なストレスの解消など実際有益な点があります。

そこで私たちは、競技スポーツと健康保持増進するために必要な運動と、分けて考える必要があると思います。

個人の心身の限界を極めたり、記録にこだわり、時に人と争う競技スポーツは私たちの体に多くの負担をかけ、運動器系や内臓を痛めることもあります。

そのことを極力防ぐためにトレーニングのプログラムや栄養管理、ストレッチやマッサージ、鍼(我田引水のようで恐縮ですが)など身体のケアが不可欠になります。

以上のことをふまえ、自分の体力やその時の体調を十分考慮した自分に合った運動をみつけ、行うことが私たち人間にとっては自然なことです。

だからこそ私たち人類の限界に挑戦するアスリートたちの姿に心を打たれるのかもしれませんね。

 

                                    神戸東洋医療学院 付属治療院  川上 靖