1.症状
胃の辺りが「重い、張る、すっきりしない、食べ物が残っている感じ」といった不快感を「胃もたれ」といいます。

2. 原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

胃の粘膜を守る粘液が不足している状態で、原因は主に二つに分類されます。

一つ目は飲食の摂り方によるもので、脂っこいものや繊維質の多いものは消化に時間がかかりやすい傾向があり、食べ物が長時間、胃の中に停滞することになります。また、よく噛まずに飲み込んだり食べ過ぎたりした場合も、胃の負担が大きくなります。熱いものや刺激の強いもの、塩分、カフェイン、アルコールの摂りすぎ等は胃の粘膜を荒らし、胃もたれや吐き気の原因となります。

二つ目は胃の機能低下によるものです。自律神経はストレスによって非常に左右されやすい機構です。休息時に活発になる副交感神経は胃液の分泌を増やし消化を促進します。

一方、ストレス下において活発になる交感神経は、胃の血管を収縮させて胃への血流量を減少させるので胃の運動や胃酸・胃粘液の分泌を減少させます。その結果、交感神経が優位な状態が続くと、消化活動は低下します。さらに、大きなショックを受けた時などは、自律神経のバランスが崩れ、強酸である胃酸が分泌され過ぎると共に、防御機構である胃粘液の分泌低下や胃粘膜の修復力の低下により、胃や十二指腸に潰瘍ができることも少なくありません。
加齢とともに胃粘膜の萎縮や粘液分泌の低下、また胃の収縮運動の低下等により、消化活動が低下し胃の不快感が出る事もあります。

胃の不快感や痛みが長く続く場合や、胃の症状と共に黒色便や体重減少等がある場合は胃潰瘍や胃癌の可能性もありますので専門医の受診をお勧めします。

(2)東洋医学的機序・原因

東洋医学的には胃もたれは、主に「胃」「脾」と言った臓腑が関連しています。「胃・脾」は消化の働きをする器官であり、その不調が胃もたれの主な原因となります。ストレスによる肝胃不和、暴飲暴食による脾胃湿熱、慢性病による胃陰虚などに分類されます。

3 鍼灸治療

(1)現代医学的鍼灸治療
 内臓体壁反射といって、内臓の不調は体表の背中や腹部に筋肉のコリや皮膚の異常としてあらわれます。そして、その筋肉のコリや皮膚の異常を刺激することで、内臓に刺激を与えることができます。背中やお腹をさわって、皮膚の異常や筋肉の異常である「反応点」をみつけて、鍼灸で刺激します。

(2)東洋医学的鍼灸治療
 ストレスによる胃もたれの場合は、足厥陰肝経の太衝や足少陽胆経の風池など気をめぐらせる経穴を使います。
 脾胃湿熱の場合は、腹部の中脘・章門・期門などの経穴を使います。
 胃陰虚の場合は、三陰交に刺すなど陰を補う治療を行います。