1.症状

 かぜの自覚症状は様々ですが、発熱、頭痛、全身倦怠感、鼻症状(鼻水、鼻づまり)、咽頭症状(咽頭痛)、下気道症状(せき、たん)があげられます。これらの症状は、体を治そうとする免疫の働きが活発になり現れる症状です。
 体がウイルスと戦っていると、粘膜内部の組織に炎症が起こり、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりなどの症状を引き起こします。また、気道でも粘膜の炎症が起こり、咳やたんで異物を外へ出そうとします。発熱はウイルスの侵入により体に異変が起こったことを知らせると同時に、自分で自分の体を治そうとする免疫の働きが活発になっているサインです。

2.原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

 かぜ症候群は、上気道(鼻、咽頭、喉頭)の急性炎症のみでなく、最近は下気道(気管、気管支、肺)にまで広がって急性炎症をきたす疾患を総称していわれます。
 かぜの原因の中でもその90~95%はウイルスだといわれています。ウイルスは非常に小さい物質で、人の病気の原因となる微生物の中では最も小さいものです。そのため自分が生きていくための物質を独力で作るだけの機構を備えていないため、ほかの細菌や動物の細胞に寄生して増殖していきます。
 ウイルスは200種類以上存在していて、中でも風邪の原因として多いのがライノウイルスやコロナウイルスです。ライノウイルスやそのほかのRSウイルスと呼ばれるウイルスでは、大人だとかぜの症状で治まることが多いですが、子供がかかると気管支炎などにまで進む場合もあります。これらのウイルスはかぜをひいている人がくしゃみをしたり、話をしたりして出た飛沫がしばらく空気中を飛散したのち、それを吸い込むことでうつります。これを飛沫感染といいます。この飛散中のウイルスは温度や湿度によって影響を受けることが知られています。湿度が40度以下の空気中ではウイルスの活性が比較的長く維持されます。

(2)東洋医学的原因・機序

 東洋医学では風邪を「ふうじゃ」とよび、風による邪気の影響とされています。ウイルスや細菌の存在が認識されていなかった時代から、風邪の影響により身体の弱い人はかぜの症状を発症しやすいと考えられてきました。
 自然に吹く冷たい風が体にあたることで、体から熱を奪いゾクゾクと寒気が起こる寒邪のタイプや、体に湿が溜まっていることで鼻水やくしゃみを発症させる湿邪のタイプ、寒気はなく高熱が出る熱邪のタイプなど、かぜも様々な邪気の影響により分類されています。

3.鍼灸治療

 鍼灸治療は、かぜの諸症状を緩和させる目的で行われます。

 鼻水などの鼻炎症状では鼻周囲にある迎香のツボ、頭痛には天柱や風池、関節痛には合谷・外関・曲池・足三里・陽陵泉などのツボを使います。

 かぜの引きはじめに多い寒気には、背中にある大椎や風門などのツボをお灸などで温めるといいです。ただし、高熱や喉の腫れ・痛みなどがある際には悪化させてしまう場合もあるので注意が必要です。
 
 かぜの急性期を過ぎて発熱がおさまっても、咳や倦怠感、胃腸症状などが残る場合があります。そのような場合にも鍼灸治療は効果的です。
 
 咳には、肺兪や中府などの肺の気が強くなるツボを使います。胃腸症状では、臍にお灸をしたり足三里のツボを使います。倦怠感には全身的に灸を使いますが、免疫力も調整できるため早く改善しやすいです。