1.症状

 喘息の主な症状として、咳・たん、喘鳴(息をする時にゼーゼー・ヒューヒューと音がする)、呼吸困難(息苦しさ)などが現れます。これらの症状は夜間睡眠中に現れることが多く、咳で眠りが障害されることもあります。発作の程度がひどくなると苦しくて横になれない場合や、動作がかなり困難になる場合もあります。
 重度の喘息発作が起こると、呼吸困難の程度が強いため、話すことや歩くことなどが難しくなります。また、酸素の欠乏により、血液の色が黒っぽくなり、爪や唇の色が青紫に変色することもあります。

 喘息発作は、夜から早朝にかけて起こりやすくなると言われています。寝ている間は昼間より呼吸する量が少なくてもいいので自然と気道が狭くなります。 そこに朝方の冷たくなった空気を吸い込むと、気道はいっそう狭くなり、また冷たい空気が刺激となって、発作が起こりやすくなります。

2.原因・機序

 喘息はゴホゴホと咳き込むため、のどの病気と思われがちですが、肺までを含めた「気道(特に気管支)」が慢性的なアレルギー性の炎症を起こしている病気です。気道とは、平滑筋という筋肉で囲まれ、粘膜で覆われている空気の通り道です。炎症によって敏感になった気道が様々な刺激に対して反応して狭くなることによって、咳や喘鳴などの症状が発現します。この症状が発現した状態を「喘息発作」と呼びます。さらに重症の発作を「喘息重積発作」と呼び、気管支喘息の危険な状況です。
 喘息発作は、ダニやほこりなど特定の抗原への過剰な免疫反応(アレルギー反応)によって引き起こされる場合や、大人の喘息で多く見られるようにアレルギー反応以外の因子によって引き起こされる場合があります。ご自身の喘息を悪くする原因を知り、原因を除去、または避けるように心がけることが重要です。

 近年では大人の喘息が急増しており、大人の喘息は小児喘息に比べ治りにくいといわれます。働き盛りの40代を超えてからの発症が半数以上を占めることから分かるように、仕事の過労、ストレスのせいで重症化しやすいこと、年齢と共に気道や肺の機能が低下することなどが主な原因といわれております。

3.鍼灸治療

 気管支喘息は生命に関わる病気です。薬物治療と並行して鍼灸治療を取り入れていく方法が安全かつ、治療効果もより引き上げることができます。
 気管支喘息の鍼灸療法においては、喘息発作を引き起こしにくい体質にしていくことを第一の目的とします。そのため発作が出ていない安定期に、全身の体調を整え、体のコリや疲労、ストレスを取り除く目的の治療を行っていきます。また同時にお灸により血行不良を改善し、免疫力を上げていくことも有効です。さらに気道の過敏性を抑制することに副交感神経が関与するため、自律神経機能の調整もはかります。
 主に用いられるツボとして「中脘」「関元」「肺兪」「脾兪」「腎兪」「太淵」「尺沢」「中府」などがあります。

 また喘息発作は上部胸式呼吸を招く場合が多いので、症状を増悪させる緊張した頸肩部のコリを緩めていく治療も合わせて行い、つらい症状の悪循環を断ちます。この場合のツボは「風池」「完骨」「天柱」「肩井」などが用いられます。

 これらのようにそれぞれ原因が異なる喘息に対して、有効な鍼灸治療を行っていきます。