1.症状

 更年期とは一般的に閉経前後の約10年間を指します。この更年期にあらわれる発汗やのぼせ、肩こり、不安感などの様々な症状の中で他の病気を伴わないものを更年期症状といい、その中でも日常生活に支障をきたす状態のものを更年期障害といいます。
 更年期障害では、のぼせやほてりといったホットフラッシュや発汗、手足の冷え、動悸、めまい、肩こり、関節痛といった自律神経失調症の症状や不安感、イライラ、無気力、抑うつといった精神神経症状が現れます。

2.原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

 更年期には卵巣からエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンの分泌が急激に減少しホルモン環境が大きく変化することでホルモンバランスが崩れ身体に不定愁訴が起こります。しかし、このようなホルモンバランスの乱れだけで更年期障害が生じるのではなく、子供や夫婦間の家族問題や職場や地域といった社会環境因子が重なることで発症すると考えられています。
 特に更年期障害では、うつ病や不安障害といった精神疾患との鑑別が重要となります。「簡易更年期指数(SMI)」といった自己チェック表があるので、更年期症状に悩まれている方は一度チェックしてみてください。

(2)東洋医学的原因・機序

 『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』という古典の上古天真論篇(じょうこてんしんろんへん)には、女性の身体の変化について記載されており49歳で閉経を迎えることが記されています。平均寿命が延びても昔から女性の閉経年齢がほとんど変わっていないことがわかります。
 東洋医学では、女性の健康は血(けつ)と関連していると考えられています。49歳前後で、血が不足すると、顔色が青白く、手足が冷えて、心臓が動悸となったり、不眠や不安などの精神症状が起こりやすくなり、月経周期が不定期となります。肝胆の気のめぐりが悪くなり、イライラしたり、怒りっぽくなります。

3.鍼灸治療
 鍼灸治療では気血のめぐりを改善します。天柱や風池や肩井で肩こりをとり、膈兪や肝兪で血のめぐりを改善します。腹部の天枢や関元などでお腹の気血の循環を改善し、血海や三陰交で下肢の血のめぐりを改善します。
 全身の気血のめぐりを改善することで、更年期の心身症状が改善されます。