「みなさんは疲れを感じることができていますか?」
桜の開花が待たれる季節となった神戸です
冬の寒さから少しずつ開放され、体のこわばりもほどけていくような気にもなりますそうすると反対に、体の不調やしんどさを自覚する方も出てこられます。人にとっての認識とは常々不思議なものだと感じています。
例えば、同じ痛みであってもなにかに集中していたりうれしいことがあったりすると、今まで感じていた痛みも和らいだり時には一切気にならなくなるほどです。
これは脳を含めた体内で作られる化学物質などの働きといえますが、この分野についてまだまだ解明されていないことも多くあり、今後の研究が待たれるところです
日々臨床にあたっていると、患者さんから「鍼治療は癖になるから注意した方がよいと言われたのですが本当でしょうか?」と尋ねられることがあります。このことについてみなさんはどう思われますか
では、なぜこのようなことが言われるのか、私の考えをお話したいと思います
私たちが診察・治療をさせていただく患者さんの中には、重篤な疾患や難病の方もおられます。そのような方々の治療は、長期化することもあります。
そして治療目的が完治ではなく疾患の進行を緩やかにしたり、症状の増悪をくいとめるものであったりもします。また、日々大きな肉体的・精神的疲労にさらされている方も、定期的に鍼灸治療を行うことがあります。もしくは、そこまで重篤な疾患ではない方でも、日々大きな肉体的・精神的疲労にさらされている際は、定期的に鍼灸治療を行うことがあります。
私たちは毎日の仕事や家庭環境、ストレスなどを自分が思うように変えられるとは限りません。そういった環境の中で、いかに健やかに暮らすことが出来るかは私たちの重要なテーマになり、鍼灸治療を行うことで、体調を整え一定のQOL(生活の質)を保つことができます。
このように定期的に鍼治療を受けられる方を第3者からは、癖のようだとみえるのかも知れません
ところで、鍼灸治療にはさまざまな効果があります
一般的によく言われるのが鎮痛作用、血行促進作用、免疫を高める作用、自律神経調整作用、美肌作用など、意外にも多くあります。
そんな数多い効果の中でもあまり語られていない効果が私はあると考えています。それは自分の体の疲れや不調を正しく感じ取れる効果です。
「人は、できれば疲労や不調を感じたくないのに何を言っているの?」と首をひねらせてしまったかもしれませんね
もちろん私自身もできれば疲労も体調不良も感じたいとは思いません。ただし、それが本当に体に問題がなければの話です。今まで多くの方を治療させていただいて分かった事は、私たち人間は本当の自分の体調を十分には認識できないのだという事です
私たち施術者が体に触れると、「こんなに体のあちこちが疲れていたのですね。」「疲れていないと思っていたのに治療を受けたらとても体が軽くなりました。」などという感想をよくいただきます。このことは私たちの順応性が良くも悪くも関係していると思われます
私たちは急激な状況の変化や大きな刺激は感じやすくできていますが、少しの変化や微細な刺激はほとんど認識せず通りすぎてしまう傾向にあります。
このように自覚しないまま体にはさまざまな問題が蓄積していくことになるのです。そしてその変調や疲れはあるハードルを越えた時に大きな症状として現れるのです。
その最たるもので重大な反応が突然死だと私は捉えています。そこで私が皆さんからの「鍼は癖になりませんか?」というお尋ねに対し、「鍼灸治療を定期的に受けていただくことによってご自身の体調の変化をいち早く自覚していただき、時には仕事のペースを落としたり、早めに休息を取るなどの判断をしていただきやすくなります」とお答えしています
さらにいうと、鍼灸治療によりご自身の本来の元気な状態に気づいていただくこともでき、その状態を保持増進しようと定期的に来院いただく方も多くおられます。
このような習慣を見た方が、あたかも鍼灸治療には中毒性があり、癖になるかのように誤解し言われるようになった噂だと思います。自分の体が発している声を聞き取れるかどうかも、本来は私たちが持つ能力の1つです
みなさんはご自身の疲れを感じることができていますか?
今回も知らず知らずのうちに長いコラムになってしまいました
みなさんをこれ以上疲れさせないようこのあたりで終わりにします。お疲れさまでした(笑)
神戸東洋医療学院 付属治療院 川上 靖
*************************************************************************
神戸三宮で鍼灸といえば
神戸東洋医療学院付属治療院
*************************************************************************