あなたの脳はスマホ脳?

東京オリンピックに岸田内閣誕生など、今年もいろいろな出来事がありました。加えて、昨年同様新型コロナウイルスに振り回された2021年も終わりを告げようとしています。この1年、皆様にとってはどのような1年だったでしょうか?

 

さて、1年を振り返ってみて「睡眠が浅い」「以前より集中力がなくなった」「記憶力が悪くなった」「鍵をどこにしまったのか思い出せない」・・・などの変化を感じた方はいらっしゃいませんか?

感じると思われた方に質問です。一日にどのくらいスマホの画面を見ていますかexclamation and question

 

通勤途中の電車内、周りを見渡すと老若男女問わず多くの人がスマホの画面を見ています。電車内以外でも、食事をしながら、お茶を飲みながら、お友達と話しながら、画面を見ていなくても手が届く範囲にスマホを置いている人が多いように思います。一日に何度もラインメッセージやメールが届いていないか確認し、空き時間にはデジタル書籍や動画配信、SNSのチェックをする。スマホを家に忘れた日は何だが不安で落ち着かない、夜中もスマホを手放せない、などということはありませんか?

そういう方はひょっとしたらスマホ依存症かもしれません。

 

総務省が発表しているインターネット利用時間(令和2年)の全年代平均は約168分、年代別だと10代―224分、20代―255分、30代-188分、40代―160分、50代―130分、60代―105分です。平均約3時間はスマホやパソコンなどの画面を見ていることになります。

スマホが脳に与える影響の一つは、睡眠不足です。スマホの画面からでるブルーライトの光は睡眠を促すホルモン「メラノサイト」の放出を抑制し、その分泌を遅らせます。そのため、寝る1~2時間前にはスマホやパソコンの画面を見るのをやめるよう言われています。しかし、睡眠不足を促すのはこれだけではありません。スマホやパソコンから提供されるあらゆる多くの情報は、私たちの脳を常に刺激しています。画面をどんどんスクロールし、興味のある言葉を探しては、そのサイトを覗いていく。この時、放出されるのがドーパミンです。ーパミン量が増えることによって、どんどんと新しい情報や知識への欲求が高まり、スマホをスクロールすることがやめられなくなります。寝るどころの話じゃないですね。

 

また近年、「ながら運動」など、複数のことを同時にする人がいます。これは別に悪いことではないのですが、脳には「ながら」では出来ないことがあります。それが「集中」です。スマホ依存の人は、一日中スマホの存在を気にしながら、何かをしています。人間は何か作業をする時、それに集中していなければ作業記憶が低下します。「鍵をどこにいれたか思い出せない」などは作業記憶が低下しているから起こるのです。集中力、作業記憶が低下し、その上、記憶を整理する作業を行う睡眠も不足しがち・・・。

スマホはとても便利で生活に欠かせないものになりつつありますが、長時間は使用しない方が良いかもしれない、と思いませんか?

ここまで書くと、もう二度とスマホには触れない・・・と思ったのですが、すでにスマホの虜になりつつある私は、結局この作業をしながらも時折スマホを見てしまっていました。とりあえずスマホを見る時間を制限し、寝る時はスマホを別部屋に置き、スマホ依存にならないように付き合い方を考えてみます。

 

もっと詳しくスマホが脳に与える影響をお知りになりたい方は、「スマホ脳」(新潮社)という本を、デジタルではなく紙媒体で読んでみてください本

 

スマホやパソコンに向かう時間はともかく、睡眠の質が低下している、集中力も低下したかも?という方、鍼灸をお試しいただくのはいかがでしょうか。鍼灸は、睡眠の質の向上に有効といわれています。また、集中力や記憶力の低下の原因の一つとして首や肩コリによる血流の悪さも考えられます。100パーセントお悩み解消というわけにはいかないかもしれませんが、少しはお役に立てるかもしれません手 (グー)

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 田中 里佳

 

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空気のような存在もやはり大きいですね

今年もあちらこちらで大雨被害の報道を聞きました台風

気象がもたらす影響は様々ですが、私たちの身体への影響も少なくありません。

私たち全員がその影響を実感するわけではありませんが、天気が崩れる時に頭痛がしたり、古傷が痛む人もいます。他にも眩暈や体の怠さを訴えるケースもあります。

このように気象の影響により起こる体の不調を『気象病』と言います。

 

今回は、この気象病に関するアレコレを取り上げます。

気温差や湿度の状態などによっても体調を崩しますが、全ては解説できませんので気圧と身体の関係に絞ってお話します。

 

さて、患者さんの中には、台風がここ神戸からはるか遠い沖縄の海上にある時から体の不調を訴える方がおられます。

それも、実は気圧が関わっていると考えられます。

 

それについて解説するために、まず気圧のことから説明いたしますひらめき

 

私たちの身の回りには常に空気が存在しますが、通常あまり感じることはありませんよね。けれど、空気は(窒素・酸素・二酸化炭素など)しっかり重さを持っています。

この空気は、その場所やその時々により密度を変えます。密度の濃い状態を高気圧、薄い状態を低気圧と呼んでいます。

 

高気圧は空気の粒が沢山詰まっている状態で、低気圧は空気の粒がまばらで少ない感じです。そして空気の粒は冷やされると凝縮し気圧は高く、逆に暖められると膨張し気圧は低くなります。

空気の粒が詰まった高気圧は、空気の粒がまばらな低気圧に向かい空気の流れを生みます。これが風の吹くメカニズムです。

台風報道でよく聞く「9百何中hPa(ヘクトパスカル))」と言っているhPaは気圧の状態を表す単位です。地上の平均気圧は1013hPaとされていますので、台風は低い気圧ということですね。

それでは何hPa以上が高気圧?逆に何hPa以下が低気圧になるかご存知ですか?その答えは、「無い」というのが正解です(笑)

驚かれるかもしれませんが、絶対的基準値はないのです。その地域のその時の平均的な気圧より、高いか低いかによって決められています。

 

空気に重さがあると前述しましたが、例えば1013hPaで1㎡あたり10tの重さがかかっています。

1㎡は小学3~4年生の体表面積の大きさに相当します。大人では2㎡ほどの体表面積になります。子どもでは1台1tの車が10台、大人では約20台のしかかっているということになります。

私たちは知らず知らずにこんな重圧に耐えているのです。

 

気圧は高所に上がれば上がるほど低くなります。高い山に登るとお菓子の袋の中の空気が膨張しパンパンになったり、飛行機やエレベーターが上昇する際、耳が痛くなったり詰まった感じがするのも鼓膜の内側の空気が膨張しているせいで、気圧の低下が関係しています。

 

ここまで気象病を理解していただくために、気圧について簡単に解説をしてきましたが、ようやく不調との関係についてですひらめき

高気圧・低気圧、それぞれから影響を受ける方がいらっしゃいますが、低気圧による不調を訴える方の比率が多いため、高気圧の影響については省略します。

 

一つ目の影響は、高い山に登った時のように、空気が薄まり高山病のような酸欠状態になることです。このことで頭がボーっとしたり、眠くなったり、倦怠感を覚えます。

二つ目の影響は、気圧が低くなることで今まで身体を押さえつけていた圧力が下がり、私たちの身体はお菓子の袋のように膨らみます。(実際にはお菓子の袋ほどパンパンにはなりませんよ!)

この時、体内の血管は膨張し偏頭痛を起こします。また、古傷の箇所が充血したようになることで痛みが出たり、体全体が浮腫んだりすることで倦怠感が現れます。耳の中のリンパの流れも滞り、眩暈を起こすとも考えられています。

人によってはこのような変化を一切感じず健やかに暮らせる方も多くおられますが、自律神経が失調しやすい方や水分代謝が良くない方が低気圧の影響を受けやすいように見受けられます。

 

そしてこのような方々の中には、実際に低気圧が自分たちの真上に来た時だけではなく、近々天気が崩れるという前に体調を崩す方が一定数おられます。これは現在自分のいる場所は高気圧の圏内だとしても、数時間後もしくは数日後に訪れる低気圧の場所(濃い空気から薄い空気の場所)へとすでに空気の移動が始まっていて、徐々に気圧が下がってきていることを体感しているからではないかと私は考えています。ご当人にとってはとても辛いことですが、なんて繊細な感覚でしょう。

 

鍼灸治療を含めた肝心な対策の解説は割愛致します。申し訳ありません。

興味のある方は、ブログページに新しく追加された検索機能を使って、自律神経や水分代謝を改善する内容の過去のコラムも探してみてくださいね。

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 川上 靖  

 

 

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小さいけれどすごいんだよ

このブログが掲載される頃は、二十四節気でいう「白露(はくろ)」です。

台風が多く発生する不安定な気候の時期が過ぎて、暑さは落ち着き、夜に大気が冷やされることによって、朝露が草花につく頃のことです。白露を過ぎると秋分もみじさらに体が冷えやすくなります。

気温が下がると“冷え”はもちろんですが“乾燥”も目立ってきます。

 

乾燥といえば、お肌や髪の毛も気になりますが、なんといっても今回ぜひ意識していただきたいのが「爪」ですぴかぴか (新しい)

 

「爪」は小さいですが、なくてはならない大切な体のパーツだとご存じですか?

爪は表皮の角質が変化し硬化したもので、指先に力を入れる時の支えとして重要な役割を担ってくれます。手の爪がないと細かい作業を行い辛く、物を掴みにくくなります。足の爪がないと体重を支えにくくバランスがとり辛いため、知らない間に体を余分に緊張させ、こわばらせてしまいます。

 

私はダンスの練習の際に、足指をぶつけて爪を欠けさせてしまうことがあります。爪が欠けると、いつものように足を踏ん張ることが難しくバランスがとり辛くなり、踊りにくさを感じます。

小さな小指の爪であってもそう感じるので、爪の存在はすごいもんだなぁといつも感心させられます。

 

もし、なかなか体の緊張や疲れが取れにくいなぁと感じる方や、スポーツなどでパフォーマンスを上げたいとお考えの方は、一度「爪」に意識を向けてケアしてみることも良いかもしれませんね。

 

爪は体の動きを助けてくれるだけではなく、体調を判断するヒントとなってくれるパーツでもあります。

私たち鍼灸師も、患者さんから体調を伺う際に、爪の状態から推測することがあります。爪の色が白っぽい、割れやすい、反っているような形、表面がぼこぼこしている・・・。皆さんの爪はいかがでしょうか?

 

健康な爪は艶のあるピンク色で“ 桜貝のような爪”と表現されることがあります。

では、桜貝色の爪を手に入れるには??毎日のスペシャルなケアやネイリストさんからのケアを受けることも一つの方法ですが・・・

まずはexclamation気軽に「爪の根元を揉むこと」を始めてみてくださいるんるん (音符)

 

親指から小指まで、気持ち良いなぁと思うくらいの圧力で順番に揉んでいきます。

爪の根元には自律神経に関わるツボもあるため、揉むことで体調を整えることにも繋がります。私は、毎朝通勤電車に乗ったら爪を揉むことを習慣にしています。

乾燥が気になる場合は、ハンドクリームをつけながら揉むのもお勧めです。乾燥による2枚爪やヒビ割れで悩んでいましたが、爪を揉んだおかげもあり乾燥が気にならなくなりましたexclamation

 

爪のケアを意識することで、少しでも皆さんの健やかな毎日に繋がりますように☆

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 北條 直

 

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大寒

 2021年に入り、各地で雪が降るなど今年の冬は本当に寒い日が続いています。コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響というよりは、寒くて外出を控えているという方も多いのではないでしょうか。

 暦の上では、間もなく二十四節気の大寒を迎えようとしています。一年中で最も寒い時期となり、この時期に醤油や酒、味噌などを仕込むと良いとされています。これを「寒仕込み」といいますひらめき 

 「寒仕込み」に欠かせないのが、「寒の水」です。「寒の水」とは、小寒から大寒の時期に汲んだ水のことです。この時期に汲んだ水は、一年で最も雑菌が少なく、良質な水とされ、柔らかくいつまでも腐ることなく保存できるとされていました。そのため、長期保存が必要な醤油や酒、味噌などを仕込むのに適しているとされていたようです。 

 「寒仕込み」という言葉は日本酒造りの「寒造り」が元になっているともいわれています。日本酒は、原料となる米ももちろん大事ですが、使用される水の成分にとても厳しい基準が設けられているそうです。

 酒は百薬の長ということわざがあります。それなら、たくさん飲んじゃえdouble exclamationと言いたいところですが、やはり飲みすぎは禁物です。日本酒では一日一合程度までが良いとされています。

 アルコールの代謝に最も関係するのは肝臓です。

 多岐にわたる肝臓の働きを簡単にご紹介します。

①糖・タンパク質・脂質・ビタミンや無機質・ホルモンの代謝

②脂肪の消化・吸収、脂溶性ビタミン、鉄、カルシウムなどの吸収に必要な胆汁の生成

③解毒作用(血液中の有害物質の無害化、薬物やアルコールの代謝)

④血液凝固因子の生成

⑤血液の貯蔵

⑥生体防御作用・・・などです。

 これを見ていただいてもわかるように、肝臓にとって、アルコールの代謝作用はほんの一部の働きにすぎません。なので、アルコールを飲まない人でもストレス過多、暴食、不眠など良くない生活習慣を続けていると肝臓にダメージを与えます。

 肝臓は沈黙の臓器といわれ、肝臓に障害が発生していてもなかなか症状にはあらわれません。手遅れになる前に、今一度生活習慣の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

  鍼灸は、ストレスや緊張で凝り固まった身体をほぐします。そして、身体のもつ自然治癒力を引き出すことで免疫力を向上させます。この働きが肝機能の改善につながると考えられています。生活習慣の改善に鍼灸治療を付け加えることもご一考いただければと思いますほっとした顔ぴかぴか (新しい)ぴかぴか (新しい)

 

神戸東洋医療学院付属治療院 田中 里佳

 

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カンキしていますか?

今年は年始より新型コロナウイルスの多大な影響を受け、まだしばらくの間はこの困難に耐えなければなりません。神戸でも1995年から阪神淡路大震災で犠牲になられた方々への鎮魂と復興をテーマに行われてきた神戸ルミナリエが、当初の計画通りには行えないこととなりました。関係者のご助力により過去の映像の配信や、規模を縮小し東遊園地に限りイルミネーションの照灯が行われますぴかぴか (新しい)    

私たちは例年とは違う12月を迎えています。大勢での忘年会やにぎやかなクリスマスパーティーはなかなか難しくなっています。しかし私がより例年と違うと感じているのは、すでに日本で年中行事と化している年末の第九の演奏です。一万人の第九を筆頭に年末には日本中のプロ・アマ問わずオーケストラ、合唱団がベートーベン作曲交響曲第九番を演奏します。さらに今年はベートーベン生誕250年、ベートーベンイヤーとしていつもにもまして盛大に第九が奏でられたはずでした。そのはずが規模の縮小や中止といった残念な状況となっています。このような困難な状況はまるでベートーベンの人生そのものを想起させます。

ということで、今回はベートーベンと彼の作曲した第九について少しお話しますひらめき

 

ベートーベンは宮廷声楽家の父親と宮廷料理人の母親の長男として1770年12月ドイツに生まれました。父親ヨハンはベートーベンにピアノを教えましたが、その指導はあまりに苛烈でエゴに満ちたものだったようです。アルコール依存症であったヨハンは、酔ってはベートーベンや妻に暴力を振るい、機嫌よく酔っ払った時には夜中にベートーベンを起こし、ヨハンと一緒に酔っている友達の前でピアノを弾かせることもありました。そして自分が才能あるピアノ奏者のベートーベンの創造物であると威張っていました。そんな父親にベートーベンは11歳で学校を辞めさせられています。酒に溺れ宮廷声楽家を失職した父親に代わって、ベートーベンは病気がちな母親、幼い兄弟たちの生活のため働かねばなりませんでした。

親からは十分な愛情を与えられず経済的にも不安定な生い立ちを、今や楽聖(がくせい)とも呼ばれるベートーベンは過ごしました。父親の暴力の被害者でもあった母親はベートーベンに十分な愛情を与えることはできず、しかも結核で臥せっていたため、反対にベートーベンが面倒を見なくてはいけませんでした。父親は何度も泥酔し警察に捕まり、そんな父親を警察まで迎えに行くのもベートーベンの役目でした。

そんな両親と死別し、29歳の時にヨゼフィーネという貴族の娘と出会い、その後二人は強く惹かれあうようになりました。深く敬愛しあうようになる二人ですが、ヨゼフィーネの両親たちは自分たちと身分が釣り合わないベートーベンとの将来に反対します。初めはそんな両親の意見には耳を傾けなかったヨゼフィーネですが、次第に家族の説得や脅しの結果、彼の元を去っていきます。

失意に落ちたベートーベンはやがて酒に溺れるようになっていきます。そんな失意の中から何年もの時間をかけ友達がベートーベンを引き上げてくれます。しかしこのころから彼の肝臓は飲酒により蝕まれ始めます。

ベートーベンの人生は病との闘いと言ってもよいかもしれません。20代半ばからひどい耳鳴りに悩まされ次第に難聴となり、48歳ごろには完全に聴力を失います。また、32歳のときにはひどいうつ状態になっています。その時には自殺まで計画し遺書を書いています。現在でいうと心身症と診断を受けるような傾向が現れています。このような心と体の不調を抱えながら、ましてや音楽家に必須な聴力を失う苦難に見舞われながらも彼を再生させたのは、彼の友達と彼自身の音楽への愛情に他なりません。そんな彼の不屈の生命力、そして他の存在への深い愛情が、素晴らしい音楽を生み出したといえますぴかぴか (新しい)

 

彼が残した作品の中でも交響曲第九番は彼の集大成ともいえる作品です。彼が生きた時代においてタブー視されていた分け隔てない愛を声高々に歌い上げる合唱を、オーケストラが奏でる交響曲と史上初めて融合させました。この第九の作曲を行っているころに、養子にし愛していた甥が自殺を計り疎遠となってしまう大きな出来事も起こっています。そのような失意の中から、さらには完全に聴力を失った状態でこれだけの大編成のオーケストラによる交響曲を作曲するなど、彼以外には成しえなかったといえます。ベートーベンは56歳で肺炎のためウイーンでその生涯を閉じました。世界に対して己が持つ全てを与えたベートーベンですが、彼の葬儀には2万人もの市民が参列したといわれています。

 

ところで、そんな第九が初めて日本で演奏されたのは1918年、第一次世界大戦で台湾の青島(ちんたお)を守備していたドイツ兵が捕虜として徳島県鳴門に連れてこられたことがきっかけのようです。この時のドイツ兵捕虜収容所の所長であった松江陸軍大佐は、ドイツ兵を人道的に受け入れたことで知られています。また地元の人々も元来お遍路さんを手厚くもてなす風習を持っており、捕虜であったドイツ兵をも温かく迎えたのです。

 

そんな交流の中でドイツ兵による第九の演奏会が行われたのが日本初演となります。千人ほどの捕虜の中で、よくもこれだけ難解な第九の演奏ができたものだと奇跡的な運命を感じます。第九の演奏が年末に定着したのは第二次世界大戦後です。現在の東京藝術大学で学徒出陣の壮行のため演奏され、やがて終戦となり今度は生きて帰れなかった学生のために1947年12月30日に再び第九が演奏されたのです。それが毎年行われるようになり、全国に年末の第九が広まったといわれています。

 

ベートーベンと第九について話をしてきましたが、この記事ではやはり足りませんでした。ベートーベンの生きた時代はカトリック教会や貴族の影響力は絶大で、科学的な知識を持ち教会の教義や貴族の支援に背を向けた彼は異端であり、先を見据えた偉人でした。

新型コロナウイルスのまん延により、社会は今までの方式や価値観が大きく揺さぶられています。人の肉体的接触が遠ざけられるだけでなく、ウイルスに対する恐怖のためか、感染者やその治療にあたる医療従事者などへの誹謗中傷にもみられるように、心と心の隔たりも表面化してきているように感じます。そんな今だからこそ、他人への愛がめいっぱい込められた音楽が私たちにはより必要だと思います。

 

すいません、今回は鍼灸施術に関わることはどこにも出てきませんでしたが、この年の瀬は素晴らしい音楽に触れ、心身の癒しを受けてください。では換気を行った部屋で歓喜の歌を聴きながら筆をおくこととします。

 

神戸東洋医療学院付属治療院  川上 靖

 

 

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