認知症と東洋医学

 鍼灸師の免許を取得してから5年経つと、「ケアマネージャー(介護支援専門員)」の受験資格を得られます。今、5年毎の更新研修を受けているのですが、認知症の概念がこの間でずいぶん変わっていて驚きました。

 わたしは、母親が重度の認知症になった際に結構勉強をしたのですが、やはり資格を取得した10年前と現在とでは大きく変化していました。

 そこで、更新研修を受けながら、認知症と東洋医学について、再度勉強し直しました手 (グー)

 認知症のBPSD(行動症状・精神症状)といわれる、暴言や暴力、幻覚、妄想に対して、「抑肝散(よくかんさん)」という漢方薬が使われます。  

 昔から、東洋医学では肝臓が「怒り」と関係していると考えています。1980年代に、認知症の患者さんの「怒り」に対して、肝臓を治す漢方薬である抑肝散を使う実験を行い、認知症患者さんの暴言や暴力が減るという実験結果が2008年の論文で報告されました。現在では西洋医学のガイドラインでも、認知症のBPSDに対して、抑肝散が推奨されています。

  1970年代に日本の医師、小坂憲司先生が、幻覚や妄想が中心の「レビー小体型認知症」という新しい認知症を提唱しました。1995年に欧米の西洋医学でも認められ、診断基準が決まって調査したところ、欧米では「アルツハイマー型認知症」の次に多い認知症であることが判明しました。

 このレビー小体型認知症の特徴である幻覚や妄想などの症状に対し、小坂憲司先生は「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」が効果的であることを、論文などで発表されています。

  わたしの母親が認知症になった際には、認知症の診断は難しいと言われているため、「認知症専門医」のところに1時間かけて連れていき、診察を受けました。脳の画像診断を見ながら、「お母さんの認知症は、20年くらい前から始まっていたはずです。」と説明を受けました。

 「軽度認知障害(MCI)」といって、脳の海馬という記憶を司る部分が萎縮し始める障害があります。


 最新の専門書を読むと、50代くらいから年間2パーセントずつ海馬が萎縮していくそうです。年間2パーセントの減少だとわずかに感じますが、10年で20パーセント、20年経つと40パーセントの減少という計算になります。40パーセントというと半減に近いですから、70代では記憶障害がかなり進んでいることになります。

 

 最新の研究では、運動して筋肉を鍛えることで、この海馬の萎縮を抑えられることが判ってきました。ストレッチやヨガのような「ム―ブメント」ではなく、エアロビクスのような有酸素運動「エクササイズ」をすれば、脳の海馬の2パーセントの減少が相殺されるそうです。つまり、有酸素運動をしている人は、認知症になりにくい可能性が高いのです。

  また、わたしは鍼灸師ですから、認知症に対する鍼灸の効果を調べてみました本鉛筆

 マウスなどの動物実験で、鍼と灸をすると海馬での神経再生が起こることが2018年から報告されてきました。アルツハイマー型認知症の脳では、アミロイド・ベータという物質が脳に沈着するのですが、鍼灸をすると、その減少が見られました。もちろんこれは動物実験のレベルですので、まだ人間にそのまま適応はできません。それでも、希望が持てる結果だと感じます。

 わたしは、この実験結果を読んでから、毎日、自分の頭部のツボに鍼灸をしています()。以前からトルコで「鍼灸をすると学校の成績が上がる」というユニークな実験結果が報告されています。「鍼灸をするとアタマが良くなるんだ。」と家族には説明しています。

  認知症になってしまってからでは、鍼灸治療を試してもあまり効果は期待できません。しかし、発症していない時から毎日有酸素運動をすれば、海馬の萎縮を予防でき、さらに鍼灸治療を頻繁に受ければ、認知機能の低下を予防できる可能性があります。

 是非、できることから少しずつ始めてみてはいかがでしょうかほっとした顔

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 早川 敏弘

 

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芍薬の花

 「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」

 一度は耳にしたことがあると思いますが、これは女性の美しさを花に見立てて表したことわざです。

 芍薬は、長い茎の先に美しい花を咲かせます。スラっとした美しさを表現していますぴかぴか (新しい)

 牡丹は、芍薬とよく似ていますが、低めの枝分かれした木に横向きに花を咲かせます。座っているだけでも美しい姿を表現しています。

 百合は、細長い茎の先に大きな花を咲かせます。風を受けて揺れる様子から、長い足で軽やかに歩く様子を表現しています。

 

 それぞれの花の特徴から生まれたことわざですが、見た目の美しさからだけではなく、漢方薬の原料である生薬の効能から作られたともいわれています。

 

 「立てば」は、気が立っている状態を指しています。芍薬には筋肉の痛みやこわばりを鎮め、イライラなどを落ち着かせる効果があります。

 「座れば」は、ペタンと座り込んで動かない状態を指しています。座ってばかりで血流が悪くなっている血(おけつ)が原因です。牡丹は血流を改善させる効果が高いです。

 「歩く姿」は、ゆらゆらと揺れる様子から、不安定で頼りない状態を指しています。百合は生薬としては「ビャクゴウ」という読み方で使われ、精神的な不安定さや動悸、不眠などを改善させる効果があります。

 

 今の季節、開花が最も旬なのは芍薬です。

 生薬としての効能は、上記にあげたように筋肉の痛みやこわばりを鎮める効果があるのですが、これは血の不足や血行を良くする効果があるからです。血行を良くするので、手足の冷えや女性の月経困難症など婦人科疾患、美肌にも効果があると言われています。

 こむらがえりの特効薬として有名な「芍薬甘草湯」や、婦人科疾患の方によく使われる「当帰芍薬散」や、他にもたくさんの漢方薬に芍薬は配合されています。

 英名ではピオニーと呼ばれ、香水にもよく使われています。ほんのり甘い香りは女性らしく、モテ香水としても人気なのだそうです。ハーブティーとしても親しまれており、生薬と同様に血行を改善させる効能があります。

 芍薬の花は、凛とした佇まいに心惹かれる美しさがありますぴかぴか (新しい)

 人間も草花と同様、調子が良い時は周りから見ても元気で華麗な姿に映りますが、体に痛みがあって曲がった姿勢になったり、他にも不調があると弱々しく見えてしまいます。

 これから梅雨に入り憂鬱な季節がやってきます。不調を感じた時には、芍薬のような花を愛でて心を癒されるのも良いですね。それでも改善されない時には、ぜひ鍼灸や漢方薬のご相談にご来院ください。そして「立てば芍薬」のような姿を目指しましょうexclamation

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 池辺 由実

 

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クコ(枸杞)の実

 いつの間にか冬ももうすぐ終わりです。この寒さが過ぎれば、新しい命が芽ざす春が始まります桜

この時期には、冬の間ずっと眠っていた私たちの体を春に向けて準備させていかなければなりません。

 

東洋医学の理論を説明する「黄帝内経」には冬に健康管理ができないと春に色々な疾患にかかるという記述があります。これは、暖かくなるとエネルギーの消費量が冬より多くなるのに対し、摂取する栄養は冬とあまり変わらないため、筋肉に供給される酸素量が足りず、疲れが溜まって春の疾患を発症しやすくなるということです。

従って、その時期の旬な食べ物を充分に摂取して栄養分を確保しなければなりません。身体を外部の環境に合わせていく努力が必要です。

 

春の準備するのはそれほど難しくありませんほっとした顔まず、規則的に運動を行いながら、少しずつ運動の量を増やしていきましょう。普段なら、登山やジョギングなどの野外の活動を徐々に増やし、自然の澄んだ空気を通じて呼吸器の健康を管理することをお勧めするところですが、昨今の外出は風邪の元となるウイルス感染症等の危険性もありますので、室内で体を動かすことをお勧めします。軽い筋肉トレ-ニングもいいです。寒さで活動量が減り、自然に筋肉量も減っている可能性が高いです。従って、活動量が増える季節に備えて、筋肉と靭帯を強化し、体力も増進しなければなりません。あらかじめ筋肉を強化しておけば、春季の野外活動による負傷も予防できます。

 

漢方茶も健康管理に役立ちます。特に春に向けておすすめなのは、クコ(枸杞)の実のお茶ですぴかぴか (新しい)

クコの実は古くから薬として使用されてきました。高麗人参、ツルドクダミに並ぶ三大名薬の一つで、肝臓に脂肪が蓄積されるのを防止する代謝物質の一つであるビタミンが豊富なことで知られており、様々な方法で摂取が可能です。特別な副作用もない健康食品として有名です。

このクコの実は最近、英語圏でも‘赤いダイヤモンド’というニックネームで呼ばれ、多くの関心を集めているそうです。クコの実を選ぶときは色が赤くて、サイズが均等なものを選んだほうがいいそうです。

長期間摂取すると、気(エネルギー)が旺盛になり体が軽くなるだけではなく、腰や足などの下半身の力が強まり、老化を防ぐ効果もあるとして健康にとても良い食品として広く使われてきました。

漢方では強壮剤などとしてもよく使われ、特に肝臓にいい効果があると知られています。肝臓に脂肪の蓄積を抑制して、肝細胞の新生を促すそうです。慢性肝炎や肝硬変などの疾患において、炎症の除去にもいい効果があると言われています。

 

眼科疾患においては視力減退症状を緩和し、また、コレステロールの減少効果があるため血管をきれいにします。血液循環を助けて血圧の低下に効果があり、高血圧、高脂血などにも使われることがあります。

各種のビタミンと栄養素を十分に含んでいるクコの実を続けて摂取すると、季節の変わり目に荒れた肌に良く、肌の弾力を維持し、抗酸化作用により、シミやそばかすなどの色素沈着やシワができるのを防止してくれるため、美容に関心が高い方にもお勧めですほっとした顔ぴかぴか (新しい)ぴかぴか (新しい)

その他にもだるくなった体に活力を与えて、春の眠気などの予防及び強壮効果で体力の増進、疲労の回復などに効果があります。また、集中力を高める効果、及び頭痛の緩和にも良い効果を持っているそうです。このようにクコの実は、健康にはもちろんお肌にもとってもいい効果がある食品です。

 

クコの実の食べ方は色々ありますが、ここではお茶にして飲める方法を紹介します。

まず、乾燥したクコの実30g程度を、2Lの水に入れ沸かします。沸騰し始めたら弱火にして40分くらい経った後、荒熱をとってからこのお茶を冷蔵庫に保管します。

このクコの実のお茶は肝臓と腎臓を保護し、疲労回復、免疫力の強化に良いビタミンと必須アミノ酸が多量に含まれているため、体を季節の変化に適応しやすくするためには適したお茶といえるでしょう。

 

身体は私たちが思っているよりも季節の変化に敏感に反応します。今日からでも冬の間に縮まっていた体を動かし、クコの実のお茶を飲んで元気な春を迎えられるように準備していきましょうexclamation

 

神戸東洋医療学院 付属治療院より

 

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お香の効果

梅雨に入り、蒸し暑い日が続いています。雨が苦手な私には辛い季節ですがまん顔

雨の日は家で過ごす時間が長くなるのですが、少しでも快適に過ごそうと考え、最近はお香にはまっていますぴかぴか (新しい)ぴかぴか (新しい)

 

 

 

 

 お香には、棒状のスティックタイプや、円錐型をしたコーンタイプが一般的ではないでしょうか。色々な香りの物が雑貨屋などにリラクゼーションアイテムとして販売されていまするんるん (音符)

 

日本で最も古いお香は、日本書紀に記されています。海岸に流れついた流木に火をつけたところとても芳しい香りが漂い、すぐに聖徳太子に献上されたそうです。これがいまでもお香の原料としてよく使われる、香木(芳香成分を持つ木材)ですわーい (嬉しい顔)

その後、仏教の伝来とともにお香も広まり、お線香や焼香などとして使われるようになりました。平安時代以降は、貴族たちの間で部屋に香りを満たしたり、着物に香りをつけたり、香りを聞く遊びの香道という文化も生まれました。

このように、宗教から日常のリラクゼーションまで、様々なシーンで使われるお香ですが、効果も様々ですムード

 

 

①浄化作用

仏教の焼香がその一つですが、お香を焚いた時の煙の力で空間を浄化できると考えられています。邪気を払うということで、虫除けや殺菌の効果もあります。実は蚊取線香もお香の仲間です指でOK

 

②リラックス効果

好みの香りで心身のリラックス効果が得られます。アロマオイルもいいですが、焚いた時の香りはどこか懐かしく空間全体にやんわりと広がり、立ち上がる煙も見ているだけで癒されます猫2

 

③湿気取りの作用

お香に火をつけると周辺の空気を取り込みながら燃えるため、ジメッとした空気を取り込んでくれる作用があります。除湿機ほどの効果はないですが、空間の除菌効果もあり、高温多湿の日本には合っていますね指でOK

 

 

 

 

 様々な効果がありますが、今回調べていて一番驚いたのは、100%天然成分で作られたお香は、食べられるということですうまい! (顔)

どういうことかというと、お香の原料は、ほとんどが漢方の原料でもある生薬です。香りが良いだけではなく、鼻から生薬としての成分を吸うことで体調を整える効果もありますぴかぴか (新しい)お香の原料としてよく使われるのは、沈香(じんこう)や白檀びゃくだん)という香木が有名でするんるん (音符)白檀はサンダルウッドとも呼ばれ、アロマオイルの香りとしても有名です。

このような香りの高い木や植物、樹脂などをブレンドさせてお香は作られていますぴかぴか (新しい)ぴかぴか (新しい)

 

 実際に販売されているものには、合成成分が含まれているお香もあるため、むやみに食べないようにしてくださいあせあせ (飛び散る汗)また合成成分が多いものは、煙が壁紙を汚してしまう原因にもなるためご注意くださいあせあせ (飛び散る汗)

 

 香りには好き嫌いがあるため、治療院ではお香もアロマも焚いていませんが、リラックス効果やストレス発散にもとても良いので、興味を持った方はぜひご自宅で試してみてくださいウィンク

 

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神戸東洋医療学院付属治療院  池辺由実

 

 

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小満

 

 青い空、白い雲、木々の緑が色鮮やかになった今頃を二十四節気では「小満(しょうまん)」といいます。「小満」とは、一日前後のずれはありますが大体521日から65日の芒種(ぼうしゅ)までの期間をいい、「すべてのものが勢いづき、草木が生い茂るころ」を意味します芽農家では田植えの準備を始める頃でもあり、動植物に活気があふれ、秋に植えた麦の穂がつき一安心(小さく満足)することから小満とつけられたともいわれますdouble exclamation二十四節気を更に細かく約5日ごとに3つに分けた期間のことを七十二候といいます。七十二候には気象の動きや動植物に関わる変化を表す名称がつけられており、小満は下記のように分けられますひらめき

 

<小満> 

・初候 「蚕起食桑(かいこおきてくわをくう)」・・・小満の最初の頃は、育った桑の葉を蚕が食べて成長する。

・中候 「紅花栄(べにばなさかう)」     ・・・「紅」の材料となる紅花が開花する時期。

・末候 「麦秋至(むぎのときいたる)」    ・・・秋にまいた麦をちょうど収穫する時期。

 

 蚕と紅花は漢方の生薬として使われていますウッシッシ (顔)皇后陛下が養蚕をされるのは最後ということで話題になった蚕ですが、漢方で使われる蚕は普通の蚕ではなく、幼虫の頃に白僵菌(びゃっきょうきん)といわれる菌に感染して白く硬直して死んだものを乾燥させて用いますほっとした顔漢方では、風邪による発熱や頭痛、咽喉の痛み、痙攣、風疹などからでる痒みなどに効果があり、普済消毒飲(ふさいしょうどくいん)や烏薬順気散(うやくじゅんきさん)などに含まれますexclamation

 

 

 紅花は口紅の原料や着色料、食用油などに使用されます。冷え性の改善が期待され、薬膳やお茶などにも使われまするんるん (音符)漢方の生薬としては、紅花花弁を乾燥させたものが用いられ、血の巡りをよくする作用があるといわれています。通導散(つうどうさん)、折衝飲(せっしょういん)、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)などの漢方に含まれますが、妊娠中の方や月経過多の方には必要以上に血が出る恐れがあり禁忌とされていますのでご使用の際には必ず漢方の専門家にご相談ください指でOK

 

 ちなみに紅花にはいくつか別称があります目そのうちの一つが、茎の末の方から花が咲き始め、その花びらから順に摘み取ることからつけられた「末摘花(すえつむはな)」ですぴかぴか (新しい)紫式部の「源氏物語」で、常陸宮の娘に鼻の頭が赤いことから光源氏がつけたのが「末摘花」です。また、久礼奈為(くれない)・呉の藍(くれのあい)ともいわれ、日本最古の歌集である万葉集の中にもその名が記載されていますウィンク

 

 

 蚕も紅花も遥か昔から日本人の生活に馴染んできたものですが、現代ではあまり馴染みのないものになってきているように感じますがまん顔便利になっていく分、移り行く季節の変化に気づくことのない日々をお過ごしではないでしょうかexclamation and question年々気象状況は変化し、暦に記されたこととは異なることも多々あります。しかし、今回ご紹介させていただいた七十二侯のように気象や動植物に関する変化を文字におこすと、季節の移り変わりを視覚などの感覚だけでなく、頭でも感じることができると思いますうれしい顔るんるん (音符)季節を表す様々な言葉に重ね合わせながら周りの景色の移り変わりに目を向けると、これからの多くの雨もうっとうしいとは違った前向きな感情でとらえることができるかもしれないと思いませんかexclamation and questionひらめき

 

 

 

 

 

 

 

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神戸東洋医療学院 付属治療院 田中 里佳