1.症状

 各種関節に急性または慢性的に痛みや腫れが起こる状態で、通常1箇所の関節に起きることが多いですが、時には同時に複数の関節に起きることもあります。
 痛みや腫れの状態は様々で軽度であれば関節を動かすときだけに痛みや動かしにくさ、違和感がある程度です。重度になると安静にしていても常に疼くような痛みを感じ、強い腫れや熱感、発赤もみられるようになります。

2.原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

 関節をまたいでいる筋肉や腱、靱帯、関節包等に炎症が起きるケースや、さらに深部の軟骨や骨自体に損傷や炎症を起こすケースがあります。炎症が酷くなると関節内に水がたまり腫れてきます。安静にすると痛みは軽減しますが慢性的に痛みの状態が続き、その後、関節の変形をおこしたりしてしまいます。
 その原因の一つは、一定の動作の繰り返し(オーバーユース)により、筋肉の疲労が蓄積し、過緊張が起きます。その状態でさらに負荷をかけ続けると本来筋肉が持っているクッションの役割が低下し、関節内の隙間や内圧が変わり、関節の運動にアンバランスが起こることで関節に炎症を起こす原因となります。また筋肉の付着部が剥がれそうになることで痛みや腫れが生じることもあります。

 使い過ぎによる関節の痛みや腫れを起こすものとしては、テニス肘やゴルフ肘、ジャンパー膝などのスポーツ障害や、手首や指の症状を起こすド・ケルバン病や、ばね指があります。
 また、運動不足や加齢等から、筋肉の萎縮が起こります。このことで筋力が弱り、筋ポンプ作用が減ることで筋肉内の血液循環が悪くなります。筋肉の伸縮性が低下し、関節の滑らかな動きが妨げられます。時に骨や関節の変形、骨折を伴っていることもあります。

 関節に外力がかかり過ぎて起こる関節炎には、捻挫や脱臼、筋・腱・靱帯などの断裂、骨折などがあります。これは外力によって関節が過伸展されることで起こります。軽度の捻挫などの場合、痛みや腫れは日に日に減り、通常は3週間ほどで改善されます。損傷が中程度~重度の場合は、固定や手術などを行わなければならないこともあります。

 その他、膠原病やリウマチ等の自己免疫疾患や、痛風等の代謝性疾患、細菌やウイルス等の感染によっても全身性の関節炎を起こすことがあります。膠原病やリウマチは女性に多くみられ、痛風は男性に多くみられる傾向にあります。

(2)東洋医学的原因・機序

 東洋医学では関節痛は「痺症(ひしょう)」として考えられます。
 「痺症」とは、身体の外から中に入り込み病気の原因となるものの影響が、筋肉・骨・関節に疼痛・しびれ・重だるさ・関節腫脹・変形・熱感などの症状として表れることをいいます。原因として考えられるものには、「風邪(ふうじゃ)」(吹く風のように動く性質をもつ)、「湿(しつ)邪(じゃ)」(身体にたまった余分な湿)、「寒(かん)邪(じゃ)」(寒さや冷気)、「熱(ねつ)邪(じゃ)」(熱さ)などがあります。
 これらのものは、「風邪+湿邪+寒邪」もしくは「風邪+湿邪+熱邪」などのように組み合わさることで、血行を悪くしたり、水の流れを滞らせ湿をたまらせたりします。

3.鍼灸治療

(1)現代医学的鍼灸治療

 筋疲労や筋肉の過緊張、萎縮より起こった関節炎では、血流促進や筋緊張緩和を目的とし、原因となっている筋肉に鍼を行います。こうして筋コンディションを上昇させることで、関節への負担と痛みを軽減させます。さらにそれらの効果を高めるために低周波鍼通電療法(1~2Hz)を行う場合もあります。
 痛みや腫れ、発赤等がみられる炎症部位に対しては、疼痛を軽減させるために低周波鍼通電を行うこともあります。90~100Hzでは血流を抑えることで抗炎症作用を引き出します。また関節周辺部位に鍼をすることで、炎症により増えすぎた関節液や組織液の再吸収を促します。関節の腫れを改善することで疼痛が軽減されます。

(2)東洋医学的鍼灸治療

 まず症状に関連している部位を探し、そこに対して治療をおこないます。加えて、風邪・湿邪・寒邪・熱邪により滞った気血の流れを改善するために、袪風通絡(風邪をとり)、温経散寒(経脈を暖める)、袪湿通絡(痰湿を除き)、清熱(熱を取る)や活血化瘀(血の運行を良くする)などの治療を行います。
 風邪・湿邪・寒邪のうち、いずれの影響が強いかにより、選ぶツボが変わってきます。例えば、風邪が強い場合は、風池・膈兪・血海に、湿邪が強い場合は陰陵泉・足三里などのツボを使います。寒邪の影響が強い場合は、腎兪・関元などのツボに灸をします。また、熱邪が加わっている場合は大椎・曲池・合谷などのツボを使うことがあります。