1.症状

生理期間中に生理に随伴して起こる下腹部痛、腰痛、頭痛などのことを言います。
全体の約8割近い方は何かしらの生理痛を感じていると言われます。

多少の痛みは生理的な現象ですが、生理痛が強く生活に支障をきたすものを「月経困難症」と呼び、約3割近い方が月経困難症で苦しんでいます。

2.原因

(1)西洋医学的原因・機序

月経時に生じる痛みの原因の多くは「プロスタグランジンの過剰分泌」です。
プロスタグランジンは子宮内膜から分泌される生理活性物質の一つで、子宮を収縮させ、体外に不要な経血や粘膜を押し出すというとても重要な役割をしています。

しかし、プロスタグランジンの分泌量が必要以上に多くなると、子宮収縮が強くなり過ぎてしまい、結果的に下腹部痛を感じるようになります。

(2)東洋医学的原因・機序

東洋医学では生理痛を「痛経」または「経行腹痛」と言い、生理期あるいはその前後に周期的に起こる下腹部や腰部の疼痛のことを指します。

痛経は他の痛みと同様に、様々な原因により「気血の運行が滞ること」で起こります。
気血の運行が滞る原因としては寒さやストレス、気血の不足、虚弱体質などが挙げられます。

3.鍼灸治療

それぞれの症状をみて、どの臓腑の不調が生理痛の原因となっているかを見極め、その臓腑の機能を正常な状態に戻す治療を行います。

体を冷やす服装や冷たい飲食物の摂り過ぎなどによる生理痛(寒湿)の場合、体を温め冷えを取り除き、余分な水分を外に排出することで、血流を改善し、生理痛を緩和します。
これには中極、水道、地機などのツボを使います。冷えが強い場合は灸を合わせます。

イライラや怒りによる生理痛(肝鬱)の場合、肝気の流れをよくすることによって、精神的に安定させ、血流を改善するように治療を行います。
これには気海、太衝、三陰交などのツボを使います。

過度な疲労やストレス、不摂生な生活などにより、月経をコントロールする肝腎を消耗したことによる生理痛(肝腎虚損)の場合、肝腎を養い、気血を補うことで生理痛を緩和します。
これには肝兪、腎兪、関元、足三里、照海などのツボを使い、お灸を合わせる場合もあります。

人によって体質や生理痛の原因は異なります。
それぞれの体質や原因にあわせて、使用するツボを選び、治療を行います。