1.症状

 肩コリとは、首や肩、肩甲骨の辺りに重さや痛み、動かしにくさ等を感じる不快な状態です。感じ方は人によって異なり、「張ったような感じ」「鉛が乗っているような感じ」「息苦しい」「肩甲骨の内側が鉄板のように硬くなっている感じ」等を訴える方もいます。また肩コリがひどくなると、頭痛、めまい、吐き気、手の痺れ等が現れることもあります。
 国民生活基礎調査で、“普段感じている「自覚症状」はありますか?”に対する回答トップ3に腰痛と並んで「肩コリ」がランクインしています。

2.原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

 前傾姿勢でのデスクワークや、スマートフォンの使用等を続けると、頭や腕の重さを支える首・肩回りの筋肉に負担がかかります。さらに同じ姿勢を続け動かさずにいることが肩コリのより大きな原因となります。そのためストレッチ等、定期的かつ適度な運動を怠ると、首・肩の筋肉は緊張が高まり、肩コリが起こりやすくなります。
 このように肩コリは筋肉由来のものと考えがちですが、実は様々な他の原因も関係しています。そんな別の原因について説明をしていきます。

・感覚器や口腔との関連
 眼の疲れや視力低下、花粉症・風邪・慢性鼻炎、噛み合わせの悪さ等も、首や肩コリの原因となります。また口内炎や歯周病等、口腔内に炎症があると反射的に首や肩の筋肉を緊張させ、コリを引き起こします。
 突発性難聴や中耳炎等の耳の症状がある場合にも強い首や肩のコリがみられます。

・精神的ストレスやうつとの関連
 姿勢が原因で起こる肩コリは物理的要因によるものですが、精神的ストレスで自律神経のバランスが乱れ起こる肩コリもよく知られています。
 自律神経とは、概ね24時間サイクルで交感神経、副交感神経が協調性を保ちながら、大きくバランスを崩すことなく、循環機能や内臓機能をはじめ、体内環境の調節係の中心を担っている神経です。交感神経は身体が活発に動いている日中に働き、太陽が沈むと共に徐々に、その活動を低下させていきます。
 精神的ストレスにより、交感神経が高まり過ぎる、または高まっている時間が長くなり過ぎると、筋肉や血管が収縮し、肩コリが現れます。
 うつ病では食欲不振、睡眠障害、情緒不安定などの自覚症状と同時に肩コリがみられる場合もよくあります。

・内臓との関連
 狭心症や心房細動などの心臓の病気は、自律神経を介して、反射的に左肩の筋肉の緊張を高め、肩コリを感じることがあります。肝臓や胆嚢の病気、またそれらに多く負担のかかる生活習慣により、右肩~肩甲骨の内側辺りにコリを感じることがあります。
 また軽度の気管支炎や喘息なども肩コリの原因となります。心臓は左、肝臓、胆嚢は右の肩コリを起こしやすいのが特徴ですが、呼吸器から起こる場合は両側の肩から背中にかけてのコリが多くみられます。

(2)東洋医学的原因・機序

 東洋医学の考えでは、肩コリは頸の後ろから肩甲骨の間に起こり、詰まりやこわばりがある状態をいいます。
 寒さやストレス、疲労などが原因となり、気(エネルギー)・血・津液(体内の水分)が十分に生成されずに不足する、または、気・血・津液の流れが悪くなることで肩コリが起こります。生成不足による肩コリでは倦怠感を伴うような鈍い痛みがみられます。また、気・血・津液のうっ滞は、寒さやストレスだけでなく、外傷によって起こることもあり比較的強い痛みを伴います。

3.鍼灸治療

(1)現代医学的鍼灸治療

 多様な原因はありますが、病態で共通していることは筋肉の過緊張による血流障害です。
 その為、鍼灸治療では、まず過緊張を除去することが第一目標となります。最も緊張している筋肉にはトリガーポイント(以下、TP)と呼ばれる特有の硬結が形成されています。
 トリガーポイントとは、痛みやだるさの引き金(Trigger)となる点(Point)という意味です。圧迫すると普段、感じている症状が再現することがあり、「そこです」というリアクションがでることがあります。そこに鍼をうつと鍼特有の響きを感じる方が多い点でもあります。
 首や肩などの筋肉を触診しながら、より辛いコリ(TP)を探し、そこに鍼を打つことで緊張を緩和させ本来の筋の硬さに戻します。TPがよくでき、鍼灸治療ポイントになるツボは、肩井、天髎、肩外兪等です。
 慢性化している筋緊張ほど筋内血流は悪く、鍼治療によってもTPの改善が限られる場合があります。そのようなときには低周波で鍼に電気を流し、筋肉を動かすことにより血行をよくします。(筋のポンプ作用)このことでTPの改善がなされ健康な筋肉の状態に戻ります。
 また鍼灸治療にプラスして、生活指導やストレッチ等、普段から肩コリを予防または軽減するための指導も行っています。

(2)東洋医学的鍼灸治療
 治療方針としては筋肉や関節のこわばりをゆるめ伸びやかにし、経絡(エネルギーの通り道)を温めたりなどして気・血・津液の流れがスムーズになるようにします。凝りや痛みが発生している筋肉や、その経絡に所属するツボを治療ポイントにします。同時に気・血・津液の生成に関わる臓腑の働きを高める治療を行います。
 気血の流れを促す「大椎」「至陽」、ストレスによる気の流れの停滞を改善する「太衝」、気・血・津液の生成に関わる「脾兪」「中脘」「足三里」などのツボをつかうことがあります。
 肩コリがひどくなると、より強い痛みを伴う症状へと変化していきます。日常的なものと思わず、鍼灸治療により筋肉や関節の緊張をほぐしていきましょう。