小満
青い空、白い雲、木々の緑が色鮮やかになった今頃を二十四節気では「小満(しょうまん)」といいます。「小満」とは、一日前後のずれはありますが大体5月21日から6月5日の芒種(ぼうしゅ)までの期間をいい、「すべてのものが勢いづき、草木が生い茂るころ」を意味します農家では田植えの準備を始める頃でもあり、動植物に活気があふれ、秋に植えた麦の穂がつき一安心(小さく満足)することから小満とつけられたともいわれます二十四節気を更に細かく約5日ごとに3つに分けた期間のことを七十二候といいます。七十二候には気象の動きや動植物に関わる変化を表す名称がつけられており、小満は下記のように分けられます
<小満>
・初候 「蚕起食桑(かいこおきてくわをくう)」・・・小満の最初の頃は、育った桑の葉を蚕が食べて成長する。
・中候 「紅花栄(べにばなさかう)」 ・・・「紅」の材料となる紅花が開花する時期。
・末候 「麦秋至(むぎのときいたる)」 ・・・秋にまいた麦をちょうど収穫する時期。
蚕と紅花は漢方の生薬として使われています皇后陛下が養蚕をされるのは最後ということで話題になった蚕ですが、漢方で使われる蚕は普通の蚕ではなく、幼虫の頃に白僵菌(びゃっきょうきん)といわれる菌に感染して白く硬直して死んだものを乾燥させて用います漢方では、風邪による発熱や頭痛、咽喉の痛み、痙攣、風疹などからでる痒みなどに効果があり、普済消毒飲(ふさいしょうどくいん)や烏薬順気散(うやくじゅんきさん)などに含まれます
紅花は口紅の原料や着色料、食用油などに使用されます。冷え性の改善が期待され、薬膳やお茶などにも使われます漢方の生薬としては、紅花の花弁を乾燥させたものが用いられ、血の巡りをよくする作用があるといわれています。通導散(つうどうさん)、折衝飲(せっしょういん)、芎帰調血飲第一加減(きゅうきちょうけついんだいいちかげん)などの漢方に含まれますが、妊娠中の方や月経過多の方には必要以上に血が出る恐れがあり禁忌とされていますのでご使用の際には必ず漢方の専門家にご相談ください
ちなみに紅花にはいくつか別称がありますそのうちの一つが、茎の末の方から花が咲き始め、その花びらから順に摘み取ることからつけられた「末摘花(すえつむはな)」です紫式部の「源氏物語」で、常陸宮の娘に鼻の頭が赤いことから光源氏がつけたのが「末摘花」です。また、久礼奈為(くれない)・呉の藍(くれのあい)ともいわれ、日本最古の歌集である万葉集の中にもその名が記載されています
蚕も紅花も遥か昔から日本人の生活に馴染んできたものですが、現代ではあまり馴染みのないものになってきているように感じます便利になっていく分、移り行く季節の変化に気づくことのない日々をお過ごしではないでしょうか年々気象状況は変化し、暦に記されたこととは異なることも多々あります。しかし、今回ご紹介させていただいた七十二侯のように気象や動植物に関する変化を文字におこすと、季節の移り変わりを視覚などの感覚だけでなく、頭でも感じることができると思います季節を表す様々な言葉に重ね合わせながら周りの景色の移り変わりに目を向けると、これからの多くの雨もうっとうしいとは違った前向きな感情でとらえることができるかもしれないと思いませんか
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神戸東洋医療学院 付属治療院 田中 里佳