梅にまつわるエトセトラ
寒暖の差が激しい今日この頃。
まだまだ冬物の上着は手放せませんが、日差しや日の長さは着実に春の訪れを感じさせてくれていますね。
電車に乗っていても、くしゃみや鼻をグズグズさせる音がたくさん聞こえてくるようになりました。
春の花といえば真っ先に「桜」をイメージされる方も少なくないと思いますが、その前に・・・今は「梅」が見頃を迎えています。
お花見の「花」が桜を指すようになったのは、江戸時代以降のこと。
奈良時代以前には、むしろ梅を指すことのほうが多かったそうです。
「梅にウグイス」とは、取り合わせのよい二つのもの、よく似合って調和する二つのもののたとえ。仲のよい間柄のたとえ。
似たような言葉に「紅葉に鹿」「牡丹に唐獅子」「竹に虎」などがあります。
この「梅にウグイス」ですが、実は「梅にメジロ」で、昔の人が間違えたのではないか、という人がいるようです。
たしかに、実際に梅の花の蜜を吸いにくるのはメジロであり、藪の中で虫を食べるウグイスはそのような姿で見かけられることはあまりありません。
しかし、滅多にないことだからこその憧れ、今風に言えば豪華共演、夢のコラボといった気持ちを込めて、私達の祖先は梅とウグイスを取り合わせることはすばらしいと思ったのでしょう。
皆さんも、お似合いのカップルなどに出くわした時には「君たちは、まるで梅にウグイスのような取り合わせだね」と、ぜひこんな感じで使ってみてください。
ところで、皆さんは乗り物酔いしやすいですか。私は小さい頃からバスやタクシーに乗るとすぐに酔ってしまい、今でも車内で本を読んでいる人などを見ると信じられません。
最近では鍼灸師でなくとも「内関」というツボが乗り物酔いに効くことをご存知の方も多く、カー用品、トラベル用品売り場などでは「内関刺激バンド」なるものが売られているそうです。
ちなみに内関は、掌を上に向け、手首のしわの中央から肘に向かって指3本分のところにあるツボで、乗り物酔いだけでなく、吐き気やつわりなどに効果があることが科学的にも実証されています。
なぜ、急に乗り物酔いの話になったかというと、「内関」を知らなかった子どもの頃、私は漫画で読んだ「おへそに梅干を貼ると酔わない」というのを信じ、よくやっていたからです。
そう、梅つながりです。
残念ながら、この民間療法には医学的な根拠はなく、「梅干をおへそに貼っているから大丈夫」という思い込みや安心感によって、酔い止めの効果が得られていたと思われます。
せっかく乗り物酔いの話になったので、もう少し続けます。
乗り物酔いは、乗り物の揺れによって平衡感覚を知覚する耳の奥(内耳)が常に刺激されていることに加え、その感覚と周りの景色などの視覚刺激や身体の筋肉で感じる感覚とのズレによって生じる自律神経の失調状態です。
睡眠不足、空腹、満腹、疲れていたなどの身体的要因、カーブや揺れの多い道を通った、ガソリンや車内の匂いが嫌いなどの物理的要因、自分は乗り物酔いすると思い込んでいる、心配事や不安な事を抱えていたなどの心理的要因などにより、乗り物酔いを起こしやすくなります。
逆に、内耳の状態を整えておく。しっかり睡眠をとる。胃腸の機能を高める。心身の疲労をためこまない。
など、できる範囲で乗り物酔いの要因を取り除いておくことで酔いにくくなるとも言え、これらは鍼灸の得意分野でもあります。
年度末、なにかと多忙な毎日を過ごされている方も多いことと思います。
帰り道、普段気にしていなかった電車の揺れが妙に気持ち悪く感じるようなことはありませんか。
また新生活で、慣れない交通手段に変わる方もいるでしょう。
息抜きに梅を見に行くもよし、鍼灸治療を受けるもよし。
無事に新年度を迎え気候がよくなってきた頃、乗り物酔いの心配なく、心も身体も軽く出かけられるように、今のうちから調子を整えておきましょう。
神戸東洋医療学院付属治療院 池田 朋子