1.症状

動悸とは、普段意識しない心臓の拍動やその乱れを自覚し、それに対して不快を感じる症状です。

2.原因・機序

(1)西洋医学的原因・機序

 動悸は心臓疾患や癌、自律神経の乱れなどからくる症状の一つで原因は様々です。不整脈や強い心拍動、精神不安によるものなどがあります。
心臓の拍動は自律神経の働きによりコントロールされています。精神的に興奮した時や緊張した時に交感神経が働き、血圧や心拍数が上昇します。このように精神的な興奮や緊張する場面で起こる動悸は問題がなく心配することはありません。しかし、精神的に緊張する場面でもないのに動悸を感じる場合は、心臓疾患や癌、甲状腺機能亢進症など疾病の一症状の可能性があり、専門の医療機関の受診が必要です。例えば心臓疾患の場合、心臓に栄養を与える血管である冠状動脈である冠状動脈が細くなったり、つまったりすることで心筋に栄養が行き渡らず鼓動が速まります。また、甲状腺機能亢進症の場合は、身体の代謝が活発になることで身体に熱がたまり脈拍が速くなり、動悸を感じるようになります。更年期症状では女性ホルモンの減少に伴い自律神経の働きが乱れることで、顔のほてりや息切れ、動悸がおきます。
 それ以外に、検査をしても心臓にも内臓にも全く異常が見つからないという場合があります。これは自律神経の乱れからくる症状として捉えられ、心臓神経症と診断されます。

(2)東洋医学的原因・機序

 動悸は東洋医学では「心悸(しんき)」といわれ、心臓の拍動を自覚し不安になることです。「心」の働きは「心主血脈(心が血と脈を管理する)」「心主神志(心が意識や感情、生命活動を支配する)」といわれており、心悸は過度なストレスや飲食不摂生、長期間の疾病、思慮過多(長く思い悩む)、体質などが原因でおこることが多いと考えられています。
 例えば、過度なストレスが「肝」に影響を与えることでエネルギーの流れが滞ると身体の中の水分が徐々に少なくなっていき、粘り気のある「痰」を作ります。また、飲食不摂生により「脾」が傷つくと消化がうまくできなくなり、余分な水がたまります。こうしてできた痰や余分な水が心に影響を及ぼすと「心悸」がおこります。随伴症状としてイライラや焦燥感、口苦(口の中が苦く感じる)などを感じることがあります。
 また、長期間の疾病は心身を疲労させ、精神が不安定になりがちです。エネルギーを作り出す力もそれを全身へと巡らす力も弱まるため、血脈の鼓動が弱くなり、心を滋養できなくなり心悸をおこします。それ以外に思慮過多が原因となることもあります。これは、あまりに思い悩みすぎると徐々に食欲がなくなり、ご飯が食べられなくなります。すると「血」の生成が減少し、栄養が「心」へと行き渡らないからです。この場合は、不眠やめまい、多夢(夢を多く見る)などの症状を伴うことがあります。
 血行不良に働きすぎや寒さなどのマイナス要素が加わることで血の流れが滞り、それが心悸の原因となることもあります。この場合は心悸に加えて胸苦しさや胸痛、肩などへの放散痛などを伴います。

3.鍼灸治療

(1)現代医学的鍼灸治療

 心臓疾患や癌など内臓疾患からくる症状の場合、鍼灸治療は第一選択にはなりません。専門の医療機関での治療が必要です。
 心臓神経症に対する鍼灸治療では、左背部の圧痛点やコリへの治療を行います。また、心臓の反応が神経を介して胸部の皮膚や筋肉にも現れてきますので、その反応に対して鍼やお灸でアプローチを行います。ゆったりと気持ちのよい鍼灸治療を受けることで自律神経の働きの乱れを改善します。

(2)東洋医学的治療

 「心」に影響を与えている原因を取り除き、「心」の機能を安定させる治療を目指します。例えば過度なストレスや飲食不摂生が原因の場合、痰や余分な水を取り除くための「豊隆」や肝の気を動かすための「太衝」などのツボを使います。思慮過多が原因の場合は、消化器官の機能を高める「脾兪」「足三里」、血の流れに滞りがある場合は「血海」を使います。そして「心」の機能を安定させるため、「通里」「神門」「心兪」などのツボを加えます。複数の原因が重なっていることがありますので、それぞれに合うツボを探して施術をおこなっていきます。