1.症状

 病院や健診施設などで測定した血圧値が、最高血圧140mmHg以上または最低血圧90mmHg以上の状態(140/90mmHg以上)をいいます。自宅で測定する家庭血圧では、それより低い135mmHg以上または85mmHg以上(135/85 mmHg以上)が高血圧とされます。
 高血圧は様々な臓器に負担をかけ、脳卒中、心筋梗塞、高血圧網膜症などのリスクを高めます。高血圧自体には自覚症状が無いため、「静かに忍び寄るサイレントキラー」とも呼ばれています。

2.原因・機序

(1)西洋医学的機序
 高血圧は明らかな原因が特定できない本態性高血圧と、疾患に伴う二次性高血圧に分けられます。ここでは、機序が明らかで代表的な二次性高血圧について述べます。

 1.腎血管性高血圧症
 腎血管性高血圧症とは、腎動脈の狭窄が原因で、腎に血液を流すための圧力の低下によりレニン(血中のアンジオテンシンや副腎のアルドステロンというホルモンを活性化して血管を収縮させ、塩分の吸収を促し血圧を上げる酵素)の過剰産生を生ずることにより発症する高血圧症のことで、全高血圧患者の約1%を占める疾患です。

 2.バセドウ病(内分泌性高血圧症)
 甲状腺ホルモンが過剰になると、収縮期高血圧(上の血圧が高い高血圧)が特に高くなります。甲状腺ホルモンが直接的に心臓を刺激し心拍出量が増えること、甲状腺ホルモンの作用で交感神経が活性化され、間接的に心臓が刺激されること、そして、甲状腺ホルモンが直接、交感神経・アドレナリンβ受容体を介して間接的に腎臓に作用し、レニン‐アルドステロン系を活性化することで血圧が上昇します。

 3.薬剤性高血圧症
 医療用薬剤のうち非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、エリスロポエチン、経口避妊薬,交感神経刺激薬などは血圧上昇作用があります。高血圧の誘発はもちろん、降圧薬との併用により降圧効果を減弱させる可能性が指摘されています。高血圧患者が他の疾患を合併し、複数の医療機関を受診することは珍しくありません。これまで血圧管理ができていた患者の血圧管理が困難になった場合や、コントロール不良の高血圧の場合は、薬剤誘発性高血圧の可能性を考慮する必要があります。

 4.本態性高血圧症
 本態性高血圧とは、「原因不明の高血圧」の意味であり、遺伝と環境の相互作用によって起こると考えられています。高血圧の90パーセントが本態性高血圧です。遺伝性があり、家族が高血圧の場合、高血圧になる可能性が高く、人種差もあります。環境としては、老化の影響があります。肥満すると高血圧になる可能性が5倍になります。塩分の高い食事、アルコールの過剰摂取、糖尿病、運動不足は高血圧のリスクを高めます。
 精神的ストレスの多い生活では、交感神経緊張により、高血圧になりやすいことが指摘されています。

(2)東洋医学的原因・機序
 東洋医学では、老化などによる腎虚、ストレスによる肝火、高カロリーの食事による痰が原因と考えられます。

3.鍼灸治療

(1)現代医学的鍼灸治療
 血圧を調整しているのは自律神経です。交感神経の活動性が高いときは血圧が上昇し、副交感神経の活動性が高いときは血圧が低下します。現代の研究で、鍼刺鍼は脳でエンドルフィンという麻薬様物質を分泌させ、ストレスを低減し、血圧を下降させます。

(2)東洋医学的鍼灸治療
 東洋医学では、ストレスで肝火が上がっていると考え、下肢に鍼をして肝火を降ろします。肩や首にある天柱、風池、肩井などのツボに刺鍼して身体の上部の気をめぐらせます。下肢にある三陰交や太溪のツボに刺鍼して気を降ろします。豊隆などで去痰の治療を行います。