忖度していますか?
7月の上旬からクマゼミが鳴き始めました
その時、ようやく地中から出てきて初鳴きをしたセミがいきなり鳥に連れ去られる場面に遭遇し、朝からこれも自然の姿なのだとしみじみとさせられました
さて、今年の流行語に必ずノミネートされるであろう忖度について今回は取り上げます
忖度を広辞苑で引くと「人の心中を推し量ること。推察する」ということで、本来、人に対する気遣いを表すよい言葉のはずです。
しかし、政治がらみのニュースでたびたび取り挙げられ、忖度という言葉自身、胡散臭さを含んだように使われており、残念に感じます
私たち、医療にかかわるものとして、患者さんの想いをいかに忖度できるかが
とても大切なことだと考えています
しかし、鍼灸科の授業などで学生さんたちにいろんな想像力を働かせることが重要であると言っておきながら、それがどれほどできているかを自分に問いかける時、反省すべき点が多くあります
人にとって自分が経験をしたことの無い状況や気持ちを推し量るというのは難しいものですそんな難しさを少しでも克服するためにいろんな患者さんの話を伺い自分の感性を磨き、さまざまな学習をしていく必要があると思っています
たとえば、自分にとって未経験の事柄を知識として身につけ、さらに想像力を働かせることで次のようなことが理解できるようになると思います
ここに、ひどい腰痛を患っている人がおられるとします。この時人は、4つの苦痛を感じる可能性があります
1つ目は身体的苦痛です。肉体の痛みそのもので、このケースでは腰の痛みです。
2つ目は精神的苦痛です。身体的苦痛からくる不安や緊張などの心の痛みです。
3つ目は社会的もしくは経済的苦痛
です。重い症状のために思うように働けず、経済的困難を抱えたり今までのように社会生活に参加できなくなることでの苦痛です。
4つ目は魂の苦痛(スピリチュアルペイン)といい、症状が重篤であったり重い病気の際に感じる、「自分はなぜ生きているのか」「人は死ぬとどうなるのか
」などスピリチュアルな苦痛があります。
私たちは、「痛み」というとつい「肉体の痛み」にばかり意識が向きがちですが、実際患者さんは「この痛みはもう一生治らないのではないか」さらに、「もっと悪くなってこのまま寝たきりになるのではないか
」そして今までしていたスポーツや趣味の旅行などができなくなることで、大切にしてきたコミュニティの喪失、時に自分の存在意義までもゆらいでしまうことになります
そんないろんな要素の苦痛を総合的に抱えながら患者さんは私たちに痛みを訴えてこられることを忘れてはいけないと思います鍼灸師であるからこそ患者さんの苦痛とその反対にある喜びの想いを忖度し、その想いを踏まえ、私たちに可能な事を続けていかなくてはいけないと思っています
だからといって、「過剰な忖度」は双方にとってよくない結果をもたらしますので、誠実で節度のある忖度を心がけたいものです
神戸東洋医療学院付属治療院 川上 靖
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神戸三宮で鍼灸といえば
神戸東洋医療学院付属治療院
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