10月10日は目の愛護デーです。「10 10」を横に倒して並べると目と眉毛に見えることから、この日に定められたそうです。

 

わたしは鍼灸師になる前、眼科病棟の看護師でした。

どんな病気でも言えることですが、自分で防げるものと防げないものがあります。

その中でも、わたしが自分で防げる病気だと思っているコンタクトレンズ(以下コンタクト)の間違った取り扱いによる、

「アカントアメーバ角膜炎」について紹介します。

 

「アカントアメーバ角膜炎」とは、アカントアメーバという微生物が起こす角膜の感染症です。

多くの感染者はソフトコンタクトユーザーであり、痛みが強い症状があるのが特徴です。

 

 

まずコンタクトについて簡単に説明します。

コンタクトは簡単に分けてハードとソフトがあります。質感が硬いものと柔らかいものというイメージです。その中でもソフトコンタクトには1day(ワンデー)や2week(2ウィーク)といった開封後の使用期限がついた、便利な使い捨てもあります。

 

例えば、ワンデーは、朝に開封してコンタクトを装着→夜外して破棄。翌朝また新しいものを開封して装着→夜外して破棄という1日限りの使い捨てです。

一方2ウィークは、朝コンタクトを装着→夜外してコンタクトを洗浄してから、保存ケースに専用の保存液を充填しそこに浸して保存。

翌朝保存ケースから出してコンタクト装着→保存ケースを洗浄して乾燥→夜コンタクトを外したらそれを洗浄し新たな保存液を充填した保存ケースに保存。

これを2週間繰り返したら古いコンタクトは破棄し新しいものを使い始めるという、一連の作業を繰り返します。

 

 

ところで、「アカントアメーバ」とは、土、泥水、水道水、どこにでも存在する微生物です。そして常在菌や細菌を餌に増殖します。

通常は我々の免疫システムで多少目に付着しても感染症にはなりません。

しかし、主にソフトコンタクトの間違った取り扱いによって、アカントアメーバ角膜炎に罹患する条件が揃ってしまうことがあります。

 

では条件とは?

「目の表面(角膜)が荒れて免疫力の低下した目に、大増殖したアメーバが付着したコンタクトを装着した」です。

角膜が荒れるには色々な理由がありますが、コンタクトの場合では使用期限の切れたものを使い続けることが原因にもなります。

 

そもそもアメーバはどこから来てなぜ大増殖するのでしょう?

それは、まず保存液に水道水などからアメーバが入り込み、更に餌となる目や瞼の周りにいる常在菌が入り込むことでアメーバが保存液の中で増殖します。

つまり、間違った取り扱いで、目や瞼の常在菌がついたコンタクトをアメーバ入りの保存液に浸し、保存液の中でアメーバに餌をあげて増やしていることになります。そして、更にその保存液を交換せず同じものを何度も使うと、アメーバは大増殖します。

そこに浸されたコンタクトはアメーバまみれ、それを目に装着すると大量のアメーバが目に付着し、アカントアメーバ角膜炎に繋がってしまいます。

怖いですね。

 

 

では、アカントアメーバ角膜炎にならないためにはどうすれば良いでしょうか?

それは、コンタクトを外した後の正しい取り扱いをするだけで良いのです。

 

①手を石鹸で洗う

②コンタクトを外して洗浄液で擦り洗う

③毎回新しい保存液に浸す

④保存ケースは毎回洗浄して乾かす

⑤眼科で定期チェックを受ける 

 

これが基本で大切で全てです。そしてもちろん、期限のあるワンデーや2ウィークなどは期限を守って使う、これが目を守ることになります。

 

次に、眼科の現場から、アカントアメーバ角膜炎になった後のお話です。

想像すると痛いです。

 

アカントアメーバ角膜炎には特効薬はありません。

そのため、治療経過は長く、入院が必要な場合があります。治療も「角膜掻爬(そうは)」と、頻回且つ何種類もの点眼や軟膏、そして必要時には点滴をします。

 

角膜掻爬とは、角膜のアメーバの病巣のところ、つまり目の表面の膜を器具でガリガリ削る処置です。ほとんどの人は毎日診察が恐怖で、処置の後は痛み止めを飲んでも痛くて泣いている人もいます。

角膜は再生能力がありアメーバもしつこいため、入院して毎日角膜掻爬が必要です。

つまり毎日、目の表面をガリガリ削られるわけです。

それだけでは済みません。その後も容赦なく頻回の点眼、消毒薬を薄めたものも点眼します、とてもしみます、痛いです。後悔します。

そして重症になると、視力が落ちます。コンタクトやメガネで補正できない視力になることもあります。

コンタクトを正しく取り扱うだけで、こんな辛いことは防げるのです。

コンタクトは本来QOLの上がる素晴らしいものです。正しく取り扱うだけで良いのです。

 

目の愛護デーをきっかけに、きちんと取り扱えている方は自分を褒め、冷や汗が出た方は取り扱い方法を見直し、

自分で防げる病気であるアカントアメーバ角膜炎にならないで欲しいなと願っています。

 

 

 

神戸東洋医療学院 付属治療院

神沢 奈帆

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