ココロを鍛える
2021年に『あはきワールド』という鍼灸雑誌に「メンタル・タフネスの鍛え方」という文章を書いたことがあります。
残念ながら、『あはきワールド』は廃刊となってしまいましたが、
文章の内容は「鍼灸師はメンタルタフネスが一番たいせつです!」と、メンタルを鍛える内容となっています。
スポーツの世界で最初のメンタル・タフネス本である『メンタル・タフネス―勝つためのスポーツ科学』を書いたジム・レイヤーは、テニスプレイヤーでした。
わたしは10代からテニスをしていたため、メンタル・タフネス本はかなり読みました。
テニスのチャンピオン達は「メンタルお化け」ばかりなのです。
最近でお勧めできるのは、大坂なおみさんのコーチだったサーシャ・バインさんの『心を強くする 「世界一のメンタル」50のルール』です。
サーシャ・バインさんは、世界ランク66位で「フィジカルは凄い才能だがメンタルに弱点がある」と言われていた大坂なおみさんのコーチとなりました。
大坂なおみさんはその後、2018年にセリーナ・ウィリアムズを破って全米オープンで優勝します。
つまり、コーチとして世界ランク66位の普通の選手を世界ランク1位にした直後に出版された本であり、これは凡人である我々にも役に立ちます。
わたしは大坂なおみさんの大ファンであり尊敬していますが、大坂なおみさんが「繊細さん」であることは世界中の人が知っています。
その「繊細さん」をメンタル・スポーツであるテニスで世界ランク1位にするメンタル技術のノウハウがまとめられています。
最近、わたしがハマっている「ココロの鍛え方」は人工的なストレス環境をつくることです。
昨年の夏は暑かったですが、30℃超えの猛暑の中で、休日は2時間から3時間歩くことを毎週、継続していました。
水分と栄養を最初にたっぷりと摂取し、熱中症にならないギリギリくらいで帰宅します。
これを繰り返すことで、暑熱環境にも馴れ、非常にココロとカラダが楽でした。
冬は逆に、登山のような恰好で、ベランダで1時間以上、自分の足に毎日、100壮のお灸をしていました。
1時間くらい継続していると、露出した足は氷のように冷えるし、手は震えるし、震えた手に持った線香では灸に着火もできません。
お灸を終え部屋へ戻っても、1時間くらい体は冷え切って、お灸の健康効果は全くありません。
つまり、このベランダでのセルフ灸は健康には良くない(笑)のを承知で、ココロを鍛えるためだけに継続していました。
大学生の頃、長野県のスキー場でアルバイトをしていた時に、何度も山頂で吹雪に遭遇したことを思い出しました。
吹雪で1メートル先が見えない中、山頂から林間のスキーコースを3時間くらいかけ夕方に麓まで命からがら辿り着きました。
体は冷え切り、1メートル進んでは止まり、崖から何度も落ちかけました。
初めての時は本当に怖かったのですが、5回くらい経験すると恐怖が激減して、「怖いけど、最初ほどは怖くない」状態となりました。
また、昔の人が滝行しているのをみて、その頃は理解できませんでしたが、今では私も、真冬のベランダで震えながら毎日お灸をしているので、気持ちがわかります。
このように、自然を相手にすると、ココロが鍛えられるのです。
鍼灸師にとっては、鍼灸の臨床が一番ココロを鍛えられます。
わたしのモットーは「戦いは最後の5分間にあり」です。
例えば、50分の施術で、40分経過した時点で患者さんに「痛みはどうですか?」と聞くと「全然、変わりません。痛いです」と、よく答えられます。
しかし、そこで何とか治療法をひねり出して、少しでも改善した状態までもっていくことは多いです。いつも「高校野球みたいだな」と思います。
高校野球では9回裏のツーアウトからでも、よく逆転勝利が起こります。
臨床でも最後の5分、最後の1分まであきらめずに粘ったら、20回に1回ぐらいは逆転が起こります。
もちろん、逆転が起こらない時もありますが、その際は「エモーショナルにではなく、テクニカルに考える」のがメンタルテクニックです。
感情は技術的分析に邪魔なので、「ここを、こう修正したら、良くなるんじゃないか?」という技術的反省を行います。
感情的に落ち込みそうなところを落ち込まずに、技術的修正に集中します。細かな修正を繰り返していくことで、結果に近づいていきます。
これらのメンタルテクニックは、他の分野の方にも参考になるのではないでしょうか。
神戸東洋医療学院付属治療院
早川 敏弘
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神戸 三宮で鍼灸といえば
神戸東洋医療学院付属治療院
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