神戸の町中での紅葉も深まってきています。

短く過ぎ去ろうとする秋を惜しみつつ、スイーツの話でもしましょう。

私にとって、秋のスイーツと聞いてまず思い浮かぶのは「モンブランケーキ」です。

先日テレビでモンブランケーキが取り上げられており、興味深く見ていました。(決してよだれは流していませんよ)

それによると、モンブランは19世紀末ごろにフランスで誕生したそうです。

フランス宮廷で食べられていたマロングラッセの製造過程で、崩れてしまったシロップ漬けの栗をペーストにし、それに生クリームを混ぜ、細く絞りだして形作られたのがはじめとか。

 

ヨーロッパ最高峰のモンブランを国境にするフランスとイタリアですが、それぞれの国から見上げるモンブランの姿は、フランス側からは、なだらかで丸みを帯びて、一方イタリアからは氷河に山肌を削り取られ切り立てられたため、険しい姿として映ります。

そのため、ケーキのモンブランの形も両国で違うことも知りました。

そんなモンブラン発祥の地の人たちに、日本のモンブランを見せると驚かれるのが、ケーキの上に乗っている”栗”です。

もともと、栗の甘露煮という食文化を持つ日本独特の工夫なのだそうです。私自身初めて知り、納得すると共に、日本の技術の修得力とアレンジ力の高さについて改めて考えさせられました。

 

私たちが行っている鍼灸治療の技術についても同じようなことが言えます。

以前このコラムでもご紹介したように、鍼灸の起源は中国で、日本には奈良時代には伝来しました。

その後も様々な中国からの影響を受けつつも、やはり日本人が持つ細かさにより、独自の技術の発展を遂げています。

 

例えば、鍼治療で使用する鍼の太さも日中では大きく異なります。

中国での太い鍼に対して、日本では髪の毛ほどの太さの鍼を使用します。(現在では逆に、日本で使用する鍼を中国で使用されることも増えてきていますが)

そして、その鍼を使っての手技も多くあります(いささか多すぎるのでは、と私などは思うほどです)。

灸治療でも、日本で行われる皮膚に直接火が到達する方法では、米の半分ほどの大きさや糸状の細さにした形にもぐさを指先で整えます。

それを使用し、治療を受けられる人の体質や症状に合わせ、刺激量を微妙に調節するなどがよい例です。

 

オーダーメイド医療とも言われる東洋医学ですが、より日本人らしい繊細な技術や創意工夫の精神を活かすことで、社会に役立つことが少しでも増やせればと思いながら、

今回はこのあたりで筆を置き、フォークに持ち替えたいと思います。

神戸東洋医療学院 付属治療院   川上 靖