この想いを胸に
迫り来る夏を感じる季節となりましたが、まだまだ季節の変わり目です。皆様、体調はいかがですか
今回は私が前職の時に毎夏参加していた「1型糖尿病の子供たちのサマーキャンプ」についてお話させて頂きたいと思います
当時、私は製薬メーカーに勤務しており、内分泌・代謝内科領域専任として主要大学病院等でお仕事をさせて頂いていました。その中で代表的な疾患は皆様もよくご存知の「糖尿病」です。ただこの「糖尿病」の中には、実は2種類のカテゴリが潜んでいます。それが「1型糖尿病」「2型糖尿病」と言われるものです
「2型糖尿病」については皆様の身近な方にもいらっしゃるかもしれません。主に生活習慣病として位置づけされるもので、食生活や運動不足などによってもたらされます。糖尿病の約90%以上がこの「2型糖尿病」です
では「1型糖尿病」とはどのような病気でしょうか?膵臓に問題があり、インスリンを体内で作ることができなくなる病気です。インスリンが不足していると、血液中の糖を体が吸収することができませんので、血液中をずっと糖がさまよい続けることになります糖という大事な栄養素を吸収できない上に吸収されない糖が常に血管の中を高血糖状態にし、毛細血管をじわじわと破壊していきます。それが手足の神経障害、腎臓病、さらには急な失明など多くの合併症をもたらします。糖尿病は名前からは想像しにくいですが、実は大変恐ろしい病気です。インスリン投与による治療が行われる前、この1型糖尿病は「死の病」と言われていました
現在では様々な治療薬が開発され、1型糖尿病であっても適切なインスリン投与により、特に健常な方となんら変わりのない日常生活を送れるようになりましたインスリンを投与するデバイス(注射器のようなもの)も改良を重ね、より細い針を使用することにより穿刺時の痛みが少ないもの、取り扱いが簡便なものが現在リリースされています
ただいくら優秀な薬剤やデバイスが市場に出ているとしても、自分で指先に穿刺して血液を採取→その血液を用いて自己血糖測定装置で血糖値測定→インスリンの容量を調節して自己注射投与、という痛みを伴う大変な作業を1日に何度も行う必要があります
冒頭でお話させて頂きました「糖尿病サマーキャンプ」というものは、生まれながらにして、または幼少期に発症した1型糖尿病の子供たちが集まって、医療スタッフ達と共同生活を送るというものです普段1型糖尿病患者として幼稚園や学校などで特別扱いをされている子供たちも、ここでは周りの子達と一緒です。自分と同じ境遇にある友達と共同生活を行い、自分は特別ではない、親が近くにいなくても友達と協力してなんでもチャレンジできるなど多くのことを学びますこのプロジェクトは全国の大小様々な団体によって開催されておりますが、私が毎年参加していたものは大学病院の小児科が主宰する大きなプロジェクトでした。糖尿病の子供たちは約50~60名、大学病院小児科のドクター、看護師、栄養士、各種メーカーからのサポート、看護学校の学生など、各種サポート人員は子供たちを大きく上回る100名以上の体制です期間中の食事は大学病院の栄養士さんがすべてキャンプ地で作ってくださり、子供たちだけではなく、私たち全員が糖尿病コントロール食を頂きますこの多くの人員が1週間生活するためにはすさまじい量が必要です。トラックをピストンさせ、大学病院から冷蔵庫を何台もキャンプ地に運びます
約1週間子供たちには様々なイベントスケジュールが組まれており、ハイキングやキャンプファイヤー、勉強、スポーツなど盛りだくさんです。私自身もいろいろな思い出が蘇ります。ハイキングの時、私のリュックにはクッキーのようなブロック状のバランス栄養食などの潤沢な非常食が備わっていました。道中それを食べながら歩こうと思っていましたが、山を登る際の過度なエネルギー消費により低血糖になり倒れる子供たちが続出しました血糖値のコントロールのために私のリュックの非常食は都度子供たちに食べさせることになったため、私のおやつにはなりませんでしたがそれでも楽しかったですし、病気をものともしない子供たちのエネルギーに感服しました
何より私にとって衝撃的だったことは、まだ小学校に上がる前の子供たちが早朝に寝ぼけまなこ状態で起きて来て、パジャマのまま自ら穿刺具を手に取り、指先に穿刺・採血を行い、インスリンの注射まで自ら行っていたことです初めてそれを目にした時、いたたまれない気持ちになったことを今でも強く覚えていますまた自己注射だけではなく、その他の治療が必要な子供たちは宿泊施設の一角でドクターが動脈採血や薬剤の点滴などを随時行います子供たちの細い細い血管に管を入れることは大変負担が大きいことです。それでも泣く子は一人としていませんでした
その光景を目にした時、私の中で「自分も医療従事者として人を支えたい」という思いが湧き上がったことを覚えています。それが今の私の原点であり、仕事をする際のエネルギーでもあります
今回は健康に関する話ではありませんでしたが、どうしてもお伝えしたく、長々と文章を書かせて頂きました。こういう経験を胸に、日々患者様と向かい合わせて頂いている谷口でした
神戸東洋医療学院付属治療院 谷口龍祐
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神戸三宮で鍼灸といえば
神戸東洋医療学院付属治療院
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