眼精疲労
1.症状
眼精疲労とは、物を見ているだけで目の疲れや痛みを感じ、視界がかすんだり、頭痛、肩こりなどが起きる状態のことです。近視・乱視・遠視など目に原因があるものや、ドライアイや緑内障などの目の病気、糖尿病や血圧異常など目以外の病気、紫外線や花粉などの環境など、原因は様々です。近年ではデスクワークでコンピュータ画面を見る仕事をしている人に眼精疲労が増えてきています。
眼精疲労が続くと、視力低下、眼のかすみ、眼の重たさや痛み、頭重感、頭痛、吐き気のほか、めまいや耳鳴り、不眠、精神的なイライラなど、自律神経が不安定になる症状も出る場合があります。
2.原因・機序
(1)西洋医学的原因・機序
眼精疲労は、目の使いすぎが主な原因ではありますが、実際に目におこっている様々な状態が原因となっています。
①近視・乱視・遠視・老眼など矯正不良によるもの
眼でなにか物を見る場合、ピントを合わせるためにカメラのレンズのような働きをする水晶体の厚さを調整しています。その調整を行うために毛様体筋という筋肉が働いています。近視・乱視・遠視・老眼など視力障害がある場合、ピントを合わせるために常に毛様体筋が緊張状態となっています。パソコン作業などで近くの距離を長時間見ている場合も同じ状態となっており、毛様体筋を酷使してしまい、眼精疲労へとつながります。また、老化により水晶体が硬くなることでピント調整力が弱り、眼精疲労の原因ともなります。
これ以外にも最近では、上下左右に眼を動かし遠近のピントを合わせるために働いている眼球の周りについている筋肉が長時間酷使されると、眼精疲労が起こることも分かってきています。また、視覚的情報の処理を行う脳の疲労によっても眼精疲労は引き起こされます。
②ドライアイや緑内障などの眼の病気によるもの
ドライアイとは眼球の表面の角膜や結膜が乾燥する状態で涙の分泌が不足することが原因です。パソコン作業で眼を酷使する際、極端に瞬きの回数が減少した場合やコンタクトレンズ着用者に多く、眼精疲労がおこりやすくなります。また、涙の分泌は自律神経によってコントロールされているため、ストレスを感じている状態でも分泌が悪くなります。
緑内障とは、網膜の視神経が障害され視野が狭くなる病気で、眼圧が高い人が多く、視力障害や頭痛がおきやすくなります。また加齢により多くの人が発症する白内障は、水晶体が混濁する病気で、視力障害やまぶしさを感じやすくなるために眼精疲労の原因ともなります。
(2)東洋医学的原因・機序
東洋医学では「肝は目に開く」といわれています。五臓六腑のうち特に目と関わりがあるのは「肝」です。肝は血液の貯蔵庫であり、蓄えられた血液は目にとっても栄養源となります。目を使うことで血が消耗され、目に栄養が行き届かずに疲れ目やかすみ目などの眼精疲労症状がおこります。
また、老化や過労による腎精の消耗が原因として挙げられます。
肝を補うのには腎の力が必要です。腎は生命の源であり、免疫やホルモン、中枢神経、造血作用をつかさどります。「肝腎同源」といわれますが、肝だけではなく腎も強くし、目に栄養を行き渡らせる必要があります。
3.鍼灸治療
眼精疲労に対する鍼治療では、目の周りのツボへの刺激に加えて、眼精疲労につながるデスクワークなどで疲労した首や肩、背中、腰などの筋肉の緊張やコリに対しても治療を行います。眼球とその周辺の筋肉の滞った血行を促進し、緊張した毛様体筋を柔軟にさせる効果があります。目の周りのツボは、目頭と鼻の間のくぼみにある「睛明」や、「承泣」「瞳子髎」「太陽」「攅竹」「魚腰」などたくさんありますが、鍼ではなく自分で押さえて刺激を加えても効果的です。首や肩にかけては、「天柱」「風池」「肩井」などが代表的なツボですが、それ以外にも阿是穴といってコリを感じるところや押さえて気持ち良いところが治療ポイントになります。
首や肩のコリを取ることは、首の後ろを通っている大後頭神経と顔面部の三叉神経の眼神経はつながっているため、顔面部の血流改善につながります。
また、目の周囲の局所的な治療だけではなく、さらに滞った血を巡らせるために全身のツボを使った治療も合わせて行うことがあります。東洋医学でいう肝を補う「太衝」や、「合谷」「足三里」というツボを使うことでの血行促進やひどい眼精疲労による自律神経症状などを改善させる効果があります。
腎を補うために、「太溪」や「照海」穴も使います。
鍼治療以外にも、眼球を動かす体操やホットタオルなどをあてるセルフケアも効果的です。
また、視力矯正のためにメガネやコンタクトレンズを使用しますが、自分の眼に合ったものを処方してもらうようにしましょう。