鍼灸専門雑誌『Tehamo(てはも)』4号に耳鍼のインタビュー記事が掲載されました
こんにちは。神戸東洋医療学院付属治療院の副院長の早川敏弘です。
2022年6月30日に発売された鍼灸専門雑誌『Tehamo(てはも)』4号99ページに、「プロフェッションへの道 インタビュー 耳鍼はサイエンス~耳鍼の歴史と日本の現状」というインタビューを掲載していただきました。
このインタビューは、2017年に早川が専門誌『中医臨床』に書いた「耳鍼療法の受容について」という論文をベースに詳しくインタビューで解説したものです。
2022年3月31日に神戸東洋医療学院付属治療院でインタビューが行われ、107ページには付属治療院スタッフがモデルで耳鍼をしている写真も掲載されています。ご協力ありがとうございました。
耳鍼は、1950年代のフランスのポール・ノジェという医師が開発しました。ポール・ノジェ先生は、耳には胎児が子宮の中にいるように、耳たぶ側が頭部で上下逆さまになっているという耳ツボの分布を最初に発見しました。それを中国が追試して、現在は中国式耳鍼の耳ツボが世界に普及しています。
インタビューでは、この複雑な耳鍼の歴史を解説させていただいております。実技の部分では、早川が行っている耳鍼のテクニックを写真入りで書かせていただきました。
耳鍼は何が得意なのか、一般の患者さんにお伝えしたいです。
まず、得意なのは「痛み」です。
脳の血流を変えることで、急性の痛みにも慢性の痛みにも効きます。ただし、例えば腰痛や肩こりで、耳の「腰」や「肩」に鍼を刺すと一時的に痛みはとれますが、しばらく経つと元に戻ります。
そのため、わたしは耳鍼と体の鍼を組み合わせて使用しています。
アメリカでは、慢性痛の患者さんにオピオイドというアヘン麻薬系鎮痛剤を使用しているのですが、鎮痛剤として副作用が強いため、アメリカ軍やアメリカ退役軍人省という政府機関は鍼を推奨しています。
そこでは体の鍼も使っていますが、「戦場鍼(バトルフィールド・アキュパンクチャー)」という耳鍼を開発して使用しています。これはアメリカ空軍の軍医さんが開発したもので、日本のNHKのテレビ番組でも紹介されました。
ASPという耳を貫通させる特殊な鍼を使用し、急性の痛みにも慢性の痛みにも使用しています(日本では、このASPという鍼が医療機器として認可されていないため、付属治療院では『戦場鍼』は体験できません )。
痛みは、痛む局所に発痛物質があるため、当然痛い局所に刺してその場所の血液循環を改善するのが一番効果があります。しかし、痛みには同時に「脳の記憶」という側面があります。局所は治ってしまっているのに、脳に「痛みの記憶」だけが残っている場合があります。
そこで耳鍼は、脳の血流を変えることで「痛みの記憶」を変えるのが得意なのです。
痛みと同じくらい耳鍼が得意なのが、内臓系の疾患です。
耳の凹みの部分には、迷走神経という神経が露出しています。迷走神経とは、内臓に分布している自律神経の副交感神経であり、眠っているときや休んでいる時に活発になる神経です。
現在、アメリカでは「耳介迷走神経電気刺激」といって、耳の凹みの部分を電気刺激することで、迷走神経を通じて内臓を治療しようという医療機器が開発されています。
2022年に付属治療院に来院された患者さんでも、耳の凹みの部分への刺激で、動悸が落ちついたり喘息や咳の症状が治まった患者さんがいらっしゃいます。これも迷走神経刺激というメカニズムが考えられます。
どちらかといえば、体にダイレクトに鍼を刺したほうが、局所の血流を改善できるし、迷走神経も活発にできるので、付属治療院に来院された患者さんには体の鍼を使いたいのです。しかし、自分で耳のツボをマッサージするだけでも、セルフケアになります。
ぜひ、ご自分でも、耳のツボをマッサージしてみてください。
神戸東洋医療学院付属治療院
早川敏弘
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