すっかり春です。そう言っている間にすぐ初夏が来るでしょうね。

さて今回は、新しい年度を迎え気持ち新たに髪型を変えたところ「まるで河童のようだexclamation」と褒められた私の話題では勿論なく、私たち鍼灸師にとっていろはのひとつにあたる「触診」についてお話します。

 

触診とは、手指で患者さんの身体に触れ行う診察を言います。

西洋医学では、腹部内臓の状態の観察などに主に用いられています。それに対して東洋医学では、様々な場面で触診を行います。西洋医学の先生の中には今も東洋医学と同様、触診を重んじている方もおられるでしょうが、それ以外の診察法を重視されていることが多いと思います。

 

まず触診のひとつは脈診です。

脈に触れ不整脈や頻脈・徐脈の有無を確認するだけではなく、東洋医学では患者さん自身の体質や生命力、心臓以外の臓部の状態なども観察します。

 

次は皮膚の触診です。

皮膚の厚み・浮腫み(むくみ)・冷え・熱感・乾燥・湿り気・ざらつき・硬軟・陥凹(かんおう)・皮下・リンパ節の状態などを観察します。

 

その次は筋肉の触診です。

筋肉量・硬軟・癒着・痛みの有無・水分量の状態などを観察します。

 

気が流れる経絡やツボの状態や反応は、皮膚や筋肉を「触り・撫で・押さえる」ことによって感じ取ります。とても原始的な診察法だと思いますが、科学の粋を集めた現代のような血液検査や画像診断技術が存在しなかった時代に、先人たちは自分たちの感覚をめいっぱい駆使し、人の体や病気を理解しそれを整理して今に継承してくれています。原始的とは言うものの、私たちの身体構造は二・三千年前から変わりはないはずで、東洋医学の触診は現代人の体調を理解するためにいささかも古びているとは思えません。

 

上記の触診に加え、最近では特に整形外科的な痛み・痺れに対し、主に筋肉に表れるトリガーポイントを処置することで、多くの痛み・痺れの治療が行えるようになってきています。その効果についての話は別の項に譲りますが、この治療効果を最大限に引き出すためには、症状の原因となるトリガーポイントを見つける触診技術がとても大切になります。

 

では、実際の皮膚や筋肉の触診方法に絞ってお話します手 (パー)ぴかぴか (新しい)

触診にあたっては自分の手指を温め患者さんの皮膚温とあまり差がでないように気をつけます。

そして、最初はなるべく手のひらを広く使い、その人の皮膚の状態を大きく捉えます。その時に赤ちゃんの頬っぺに触れるよう優しく行います。その後、徐々に力を加え皮膚の厚みや弾力などを確認し、触診範囲を広げ他に必要となる診察を続けます。

それと同時に皮膚の下にある筋肉も観察します。同じ力を込めても指が沈みやすいところや、逆に早く指を跳ね返してくるところ、粘り気や腫れを感じるところ、問題のある筋肉の深さなどを特定していきます。

問題のある筋肉を見つける際の圧迫法にもいくつかの注意点が存在します。

 

一つ目は押す力を徐々に加えることです。

少しずつ力を加えることで筋肉の微妙な抵抗感や感触の違いを読み取れるようになります。強い力を入れ過ぎることで患者さんに余計な痛みを与えたり、体に余分な力が入ってしまうことで元々読み取れるはずの反応を間違えて捉えることが避けられます。

 

二つ目は、筋肉の面に対しなるべく垂直に力を伝えることです。

そうすることで私たち鍼灸師が知りたい、治療すべき筋肉に存在する問題点(トリガーポイント)が見つけやすくなります。

 

このように言葉にするのは容易いのですが、「行うは難し」です。

人の身体は平らなところは僅かで、多くは曲線の連続です。そのため数センチ場所を変えただけで垂直の方向がその都度変わってしまいます。硬い・柔らかいという感覚や、触っているものが骨なのか筋肉なのかすら、私自身、学生時代は分からず苦労したものです。これらも積み重ねる練習により少しずつ身につくもので、ある日突然できるようになることは残念ながらありません(笑)

 

今回は私たちが行っている触診の一端についてお話しましたが、これ以上の詳細については授業のようになってしまいますのでこのあたりで終わることとします。

最後に、診察というのはもちろん多くの知識を必要とするものですが、それに併せ施術者の感覚をより研ぎ澄ますことが求められます。そのためには施術者自身の心身のコンディションを整えることも大切だと感じます。

スピルバーグ監督のE.T.という有名な映画がありますが、言葉の通じない宇宙人のE.T.と少年が指と指を合わせることで意思が通い合う感動的なシーンがあります。いつか彼らのようにとまではいかずとも、触れることで患者さんの苦痛をもっと感じ取れる施術者になりたいと思っています。

 

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神戸東洋医療学院付属治療院 川上 靖

 

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