鍼灸とは

鍼灸とは

鍼灸には、身体の中のエネルギーの流れである「気」の調節や、血流、臓腑活動を整える事により体調を改善し、人間が本来持つ自然治癒力を活性化させる働きがあります。

実際には、ツボ=経穴(気の集まる場所)を刺激することで経絡(気の流れる道)に働きかけ、その経絡に関係する臓腑や気・血を正常な状態に戻す方法がひとつです。

さらに、圧痛点や硬結、トリガーポイント [TP](関連痛を引き起こす引き金となる箇所)といった筋肉や皮膚の反応部位に直接刺鍼することで、血流を改善したり、症状を起こしている血管や神経の圧迫を取り除いたりする方法などを用います。

鍼灸治療では一回で症状が改善される方もたくさんいますが、基本的には体に無理なく徐々に効果を出すようにバランスをとりながら治療をしていきます。

鍼の特色

鍼の治療では、非常に細い金属の鍼や道具を体に刺したり接触させて刺激を与え、それによって起こる生体の反応を利用して病気に対する治療や予防を行います。患者一人ひとりに合わせた治療を施すため、長さや太さの違う鍼を使い分け、様々な鍼操作のテクニックを用いて刺激に強弱を付けていきます。

当院で使用している鍼はすべてディスポーザブル(使い捨て)です。安心してお受けください。

灸の特色

灸とは

灸の治療にはもぐさ(艾)を使用します。もぐさとはヨモギの葉の裏にある絨毛を精製したもので、殺菌、消炎、止血、保湿効果に優れています。これをツボの上において燃焼させ、温熱による刺激で経絡の流れを整えて、病気の治療や予防を行います。

もぐさの種類や施灸法により刺激量が異なり、症状や体質、治療目的により使い分けています。

鍼灸の歴史

鍼灸の歴史

鍼灸の起こりは古代中国の原始的な医術による「痛むところを石で撫でこする」事から始まったといわれています。鍼やもぐさを使った治療については戦国時代の文献に記されており、その後、前漢時代にまとめられたといわれる『素門』(ツボ、経脈、気、血などの基本概念が記されています)と、『霊枢』(診断、治療、鍼灸術などの実践技術が記されています)の2部をあわせた『黄帝内経』が編纂され、6世紀頃、大和朝廷期に中国から朝鮮半島を経て日本に伝わったとされています。中国の医書をもとに日本の医学も発展していき、安土桃山時代以降、日本独自の鍼術が始まりました。さらに江戸時代において進化し現在の形に近い治療術が形成されました。

しかし明治維新以降に近代化が急速に進む中で、西洋医学が正統な医学とみなされ東洋医学が軽視される時代がありましたが、近年再び東洋医学の価値が見直されてきています。

現代の鍼灸は、診察や治療に現代医学的思考と東洋医学的思考を融合して行われています。 治療に用いるツボを決める時も、障害に関連する神経や筋緊張などを診る現代医学的診察と、障害部位だけでなく経絡や全身の変調を診る東洋医学的診察を行うことでより効果的な治療を行えます。

また最近では治療効果の高さから欧米各国にも鍼灸が広がりを見せており、WHO(世界保健機構)では鍼治療での効果が認められる49の疾患を発表しています。

鍼灸治療の広がり

医療現場では、鍼灸の鎮痛効果が高い利点から、炎症時の痛みや神経痛を抑える治療、自律神経を調節する治療が行われています。介護医療分野では、後遺症へのリハビリテーションとして、また緩和医療現場では癌患者への痛みの軽減や精神的なケアに鍼灸が用いられています。さらに近年では、スポーツ選手のねんざや打撲など外傷性の痛みの軽減や回復の促進、スポーツ障害の予防や体調管理、美容分野での顔のシワやシミ取り、リフトアップなどにも効果を発揮するなど、スポーツや美容分野での需要も高まっています。

鍼灸治療は今後ますます様々な分野へと広がりをみせ進化する治療法といえるでしょう。

WHO(世界保健機関)における鍼灸適応疾患
神経性疾患神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
運動系疾患関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頸椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、ねんざ)
循環器系疾患心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患気管支炎・喘息・風邪および予防
消化器系疾患胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
代謝内分泌系疾患バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
生殖・泌尿器系疾患膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
婦人科系疾患更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不良・冷え性・血の道・不妊
耳鼻咽喉系疾患中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
眼科系疾患眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
小児科系疾患小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善