院される患者さんからよく受ける質問のなかには「日本ではいつから鍼がはじまったのですか?」というものがあります。

この答えは『奈良時代から』です。

 

鍼治療は皆さんがご存知のようにもともとの起源は中国で、古代では石で出来た鍼『石鍼』を使用していました。

金属で出来た鍼を使用した治療は、金属の加工技術が進んだ春秋戦国時代にまでさかのぼることができます。

 

中国を源流とした鍼治療は奈良時代に日本に伝わり、中央集権が固まりつつあった大宝律令(701年)といわれる日本発の律令制に、按摩博士とともに鍼博士という形で正式に使われています。

 

当時の鍼治療は中国伝来の最先端医学として、貴族や有力豪族のような限られた立場の人のみが受けられるものであったと思われます。

それが室町時代を経て、江戸時代には一般大衆が受けられる医学になっていたのです。

 

その後、幕末の西洋医学の伝来、明治維新後の漢方医学廃止に伴う西洋医学化、第二次世界大戦敗戦後のGHQ統治化での鍼灸治療廃止の危機など、時代につれて変遷してきましたが、

日本独自でも鍼灸治療は発展を遂げています。

 

先人達が様々な努力を積みかさね繋げてきて、今私達の手にある技術をいかに後進に伝えるのかも、私達の使命の一つなのだと改めて感じます。

 

神戸東洋医療学院 付属治療院  川上 靖