台風が日本列島を通り過ぎ、半袖や肌布団では肌寒く感じるようになってきました。

「暑さ寒さも彼岸まで」と言われるお彼岸も、とうに過ぎてしまいましたが、今年も秋の初めを色鮮やかに彩ってくれた花、「彼岸花」についてのお話です。

 

最近では庭先に植えられているのを見かけることも多々ありますが、私にとって彼岸花といえば、やはり田んぼの畦道に沿って燃えるように咲く光景が眼に浮かびます。

幼い頃から30数年、彼岸花は畦道に自然に生えるものとばかり思っていましたが、どうやら人為的に植えられたもののようです。

 

彼岸花は有毒で、特に地下茎(球根、正確には鱗茎)には、リコリンなどのアルカロイドを多く含んでいます。

経口摂取すると吐き気や下痢を起こし、ひどい場合には中枢神経の麻痺を起こして死に至ることもあります。

この有毒性や異臭を利用して、ネズミやモグラ、虫などから田んぼを守る目的で植えられたそうです。

 

一方で、鱗茎にはデンプンが豊富に含まれています。

有毒成分は長時間水にさらせば無害化され、食用とすることが可能なため、昔は飢饉に備えて田んぼの畦道に植えたとも言われています。

また、鱗茎は石蒜(せきさん)という名の生薬であり、去痰、利尿、解毒、催吐薬として用いられてきました。

民間療法としては生の鱗茎をすりおろし、足の裏に貼って浮腫を取るのに用いたり、乳腺炎や各種腫れ物、いんきん、などの患部に貼付したりすることもあります。

 

彼岸花は別名が多いことでも有名で、その数は1000以上と言われます。

いくつか例をあげると、花が一斉に咲くことから、イチジバナ・ソロイバナ・イッショバナ。

花の形から、オミコシバナ・カミナリバナ・ハナビバナ。

お墓の周りに咲くことから、ソウシキバナ・オバケバナ・シビトグサ。

そして、最もよく耳にする別名「曼珠沙華」はサンスクリット語で天界に咲く花という意味。

おめでたい事が起こる兆しに赤い花が天から降ってくる、という仏教の経典から来ています。

 

また、花が済むとまもなく葉っぱが出て、冬を越し翌年の3月末頃には枯れ、秋になると、地中の鱗茎から花茎がのびてきて、花が咲きます。

花と葉が同時に出ないことから「ハミズハナミズ(葉見ず花見ず)」という別名があり、「葉は花を思い、花は葉を思う」という意味で「相思花」とも呼ばれます。なんてロマンチック!!

 

別名だけでなく彼岸花は花言葉も多彩です。

「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」「悲しい思い出」「想うはあなた一人」

今回のタイトル、「また会う日を楽しみに」も彼岸花の花言葉の一つです。

 

今までは彼岸花の開花に、ただ秋の訪れと故郷への懐かしさを感じていただけでしたが、彼岸花のあんなことこんなことを知り、来年また彼岸花に会えるのが楽しみになってきました。

 

神戸東洋医療学院 付属治療院  池田 朋子